本丸記 | ナノ

さて、審神者に成り代わってそれなりに板について来た私は毎日のルーティンなるものが出来上がってきております。
朝起きてまず洗顔。水で顔を洗ったらずらりと並んでるスキンケアグッズの中から化粧水と乳液を取り出して鏡に映る自分の顔に嬉しくなりながら塗ったくる。ちなみにグッズたちを見るに"私"は肌の状態に合わせて使い分けていたようだけど、疎い私にはそんなこと出来ない。

それから着替えて、朝ごはん。食べ終わったら歯を磨いて昨晩振り分けた刀剣達の一日の予定を今剣に託す。
その後は出陣と遠征に向かう刀剣達の見送りをして朝のルーティンは終了である。

で、今はその最後の見送りに来ているのだけども。
出陣遠征部隊の見送りには他の刀剣達もいるため正面突破でみんなの輪に入って見送るようなことはしない。というか出来ない。

「・・・だとしても、これもこれでどうかと思うけどねー」

建物の陰からそろりと顔を出して出立する部隊を眺める私・・・不審者ですね知ってます。
あぁ、大丈夫かな。遠征はともかくとして出陣がなぁ。錬度の低い子達だから怪我しないか心配だなぁ。
刀装ちゃんと持ってるよね?体調悪いとか怪我隠してるとかないよね?
・・・なんか誰が出立する時でもこんな心配ばっかりしてる気がする。いやでも仕方ないよね。斬り合いだし。本体は刀と言えど人の形取ってて怪我すれば血も流すし。

部隊長には太郎太刀を選出したから検非違使とかいう敵さえ出てこなければ無事に帰ってこられるはずだけど。
今日も今日とて両の手を合わせて「みんなが無事に帰ってきますように」と気合を入れて祈る。まぁこんな時だけ神頼みだから効果があるのか分かりませんけどね。

──────────

ピピピッとタブレットがなって、読んでいた本から顔を上げる。
出陣部隊の帰還だ。急いで出迎えに行かねば。こそこそっと見つからないように再び朝の壁の陰に走って行けば帰ってきたばかりの刀剣達が本丸に残っていた刀剣達に囲まれて帰還の挨拶を交わしていた。
嗚呼、皆大きな怪我はないみたいで良かった・・・。小さい切り傷とか痣があったりするだろうからこの後は手入れ部屋に来てくれるかな。

ホッと胸を撫で下ろしたのもつかの間、今度は手入れ部屋へダッシュ。大きく深呼吸をして呼吸を整えたら壁にもたれて怪我した刀剣が来るのを待つ。
そう時間を置かずに二振りの刀剣が太郎太刀に連れられてやってきた。
然も部屋から直接来ましたよといった落ち着いた風を装って「怪我は?」とクールに聞くと短刀の二振──五虎退と秋田が怯えたように肩を震わせる。
ご、ごめんね!本当はすっごく心配してるよ!

「軽傷です。二人共果敢に立ち向かい、良き戦績を残しました」

答えない二人に変わって太郎太刀が答えてくれたのでコクリと頷いて短刀の二人に部屋に入るように促す。
本当はお疲れ様とか頑張ったねとかありがとうとか言いたいけどそんな性格じゃないよね、"私"は。
部屋に入れた二振をそれぞれ依代に任せるがその間も当然無言、沈黙が痛い。というか寧ろ二振ともに怯えられる始末。
もう何度か手入れしてるんだからそろそろ慣れてほしいんだけどなぁ・・・私のガラスのハートにヒビが入りそうだよ。

今日も今日とて「お大事に」と言葉を残して手入れ部屋を出る。やっぱこの態度が悪い気がする。いやでも今更素を出すのもなー。また拗れてきそうで怖い。

「お疲れ様です、主」
「ぅお、お疲れ様です」

考えながら廊下に出たら待機していたらしい太郎太刀に声を掛けられて変な声が出てしまった。この人も最近手入れについてくるようになったなぁ。いや自主的に手入れ部屋に来ない刀剣達を連れてきてくれるから助かってはいるのだけど。

私が刀剣達を乱暴に扱わないか見張ってるのかな。もし何かあれば私の身長より長い刀を一振りして真っ二つに叩き切られそうだ。
彼、私と正反対の静かなタイプだから何考えてるかとかどう接したらいいかとか分からないんだよね・・・。

「身なりを整えて後ほど戦果の報告に伺います。歌仙が新しい茶葉を手に入れたと聞いたので淹れて参りましょう」
「えっ、いいよそんなん。戦場に慣れてない子を連れた戦いから帰ってきたばかりなんだから報告だけして休みな」
「いえ、彼等がよく動いてくれたので負担はありません。それに主も少々お疲れなのでしょう・・・最近顔色がよくありませんよ。休息は適度にとっていただきたく」
「アッ、ハイ・・・」

よし、早急に今剣を呼んで報告に同席してもらおう。二人きりじゃ私が一方的に気まずい思いをするのが目に見えてるからね。
いつもごめんね今剣!今度甘い物あげるから一緒に耐えようね!


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