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「畜生!
こんなことになるなんて…」
ジュリアンは、テーブルに拳を叩きつけた。
『……ポールには気の毒だが、仕方のないことだ…』
「馬鹿野郎!
仕方ないなんてことが言えるか!
あいつは俺を探しにあそこに行ったんだぞ!
俺のことを心配して…俺のせいなんだ!
絶対に助けなきゃ…今度こそ、失敗は出来ない!」
ジュリアンは皮袋からエレスチャルを取り出し、目をつぶり両手で握り締めた。
『無駄だ…』
エレスの低い呟きは、ジュリアンの耳には届かなかったのか、ジュリアンはまだ一心に祈り続けていた。
『……ジュリアン…やめろ…もう無理なんだ。』
悲しげなその声に、ジュリアンの瞳が開いた。
「……今、なんて言ったんだ?」
『無理だと言ったのだ。
……時を遡れるのはただ一度…同じ時へは二度は戻れない。』
「……戻れない…?
……う…嘘だろ?」
エレスは黙って、首を横に振るばかりだった。
「う…嘘だ…」
『嘘ではない、ジュリアン。
辛いだろうが、諦めるんだ…』
「じゃ、じゃあ…ポールはあのまま本当に死んでしまうってのか?!
そんな…そんなことが許されてたまるか!
俺は絶対にポールを助けるんだ!」
ジュリアンは、再び目をつぶりエレスチャルを握り締めた。
『……いくら祈っても、おまえの願いは叶わない…
時は戻らん。』
それでも、ジュりアンはエレスの言葉に耳を貸そうとはしない。
そんなジュリアンの様子を、エレスはただ黙ってみつめるだけだった…
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