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「俺は一旦、宿に帰ったぜ!」
「私は始終客の行動を監視してるわけじゃないからね。
あんたは朝早くからいないようだったし、だから、昨夜から帰ってないと思ったんだよ。」
「あんたが酒場から急にいなくなったことを、ポールは心配してたからな。
それで宿屋に行ったんだろうな。
しかし、それにしてもポールはその後どこにいったんだろう。
家にはいなかったが…まさか家の中で倒れてるんじゃないだろうな。
もう一度行ってみるか!」
ジュリアンは、今までのことを考えているうちに、自分の背中にいやな汗が流れるのを感じていた。
「まさか…ポールの奴、俺が鉱山に行ったと思って鉱山に…」
「それはないだろう。
鉱山にあんたがいなかったら、すぐに帰ってくるはずじゃないか。
とにかく家に行ってみよう!」
ポールの家の扉を叩いても、やはり中からの返答はなかった。
ネイサンが裏口の扉をこじあけ、ジュリアンと共に家の中に入ったが、家の中にポールの姿はなかった。
書類もそのままだったため、おそらく昨日からここへは戻っていないだろうと思われた。
それを知ったジュリアンの胸騒ぎはさらに大きなものに変わった。
「ネイサン!このあたりの男に知り合いがいたら声をかけてくれ。すぐに鉱山へ向かう。」
「ジュリアン、何を考えてるんだ?!」
「良いから早く!掘るものも忘れずに持って来てくれよ!」
ジュリアンのただならぬ気配に押されたネイサンは数名の知り合いに声をかけ、共に鉱山へ向かった。
鉱山に着いた頃にはあたりは暗くなっていた。
「これは…!!」
土砂で埋めつくされた鉱山の入口を見た男達は言葉を失った。
「ジュリアン…まさか、ここにポールが…」
「良いから早く掘るんだ!!」
ここへ着くまでは「どうせ無駄足だ」と、何の危機感も感じていなかった男達の胸に、俄かに緊張が走った。
男達はなにも言わず、ただ黙々と土を掘る。
中でもジュリアンは、いつもとは人が変わったように真剣な表情で掘り進めていた。
疲れも空腹も感じないまま、一心不乱に数時間もの間土砂を掘り続けた後…鉱山の奥で男達が目にしたものは、ポールの変わり果てた姿だった…
「ポール…なぜ、こんなことに…」
「俺の…俺のせいだ…!!
ポール、すまねぇ!!」
その場に男達のすすり泣きが広がった…
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