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「さて、そろそろ出発するか。」

『今日はおまえにしては早起きだったな。』

「まぁな。
って、俺だっていつも昼近くまで寝てる訳じゃないぞ!
隣の町まではけっこう近いようだが、あんまり遅くに着くのもいやだからな。
本当はポールやネイサンに会って発ちたかったんだが、炭坑は遠いから仕方ないな。
ネイサンの奥さんにだけ挨拶していこうか。」

食堂で朝食を採ったジュリアンは、その後、ネイサンの家を訪ねた。
ネイサンの家では、シャーリーが部屋の片付けをしている最中だった。



「奥さん、あんた、お腹に赤ん坊がいるんだろ?
そんな大きな荷物を運んでて何かあったらどうするんだ!」

「大丈夫です。
私、けっこう力持ちなんですよ。
それに、赤ちゃんが生まれるのはまだずいぶん先のことですし…」

「馬鹿言っちゃいけないぜ!
万が一ってことがあるんだ。
そんな荷物を運ぶなんて、危な過ぎるぜ。
あんたは、じっとしてなきゃ駄目だ!
俺がやるから、あんたはそこに座ってな。」

そういうとジュリアンは、早速荷物を運び始めた。



「あ、ジュリアンさん、そんなこと良いんです。
…じゃあ、続きは今度ネイサンが帰って来た時にでも頼みますから。」

「それまでこの部屋をこのままにはしておけないだろ。
良いから、俺に任しときなって。」

まだ先のことではあるが、シャーリーは、ベビーベッドを置くスペースを作るために部屋の模様替えをしようとしていたということだった。
ジュリアンは荷物をまとめては屋根裏に運んで行く。
その様子を気にしながらも、ジュリアンが怒るため、シャーリーはじっと座って黙って見ていた。



「ようし、これで最後だな。」

滴る汗を拭いながら、ジュリアンが荷物を持ち上げた。



「ジュリアンさん、本当にお世話になりました。
おかげでこの部屋もすっかり広くなりましたわ。
まぁ、大変!もうこんな時間だったのね!
今、すぐに昼食の用意をしますからね。」

「いや、良いんだ、そんなこと。」

「何をおっしゃってるんです!
こんな大変なことを手伝っていただいたんです。
せめてものお礼に食事くらい食べて行って下さい。
お願いします!」

「そうか…すまないな。」


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