14
『ジュリアン、そろそろ起きたらどうなんだ?』
「……ん…?
なんだ?もう朝か?」
『朝ではない。もう昼に近いぞ。』
「昼だと…?そんな馬鹿な…」
寝ぼけ眼のジュリアンが、テーブルの懐中時計に目を落とした。
「おっ!本当だ!
俺、そんなに寝てたのか…
ま、良いや。
どうせ、行くとこもないんだし…」
『おまえという奴はまったくだらしない男だな。』
「はいはい、どうせ俺は、下品で馬鹿でだらしない男ですよ。」
『やっと自覚が出て来たか。』
「うるせぇ!」
今の今まで、二度寝しようと考えていたジュリアンだったが、エレスの毒舌によって目が冴えてしまったので、仕方なく起きることにした。
「行くとこもないし、何か食べたら昼寝でもするかなぁ…」
『起きて早々考えることが、昼寝のこととは…
そんなに暇なら炭坑で働いたらどうなんだ?』
「やなこった。
あんなもん掘るくらいなら、石を掘りに違う町に移動するさ。
どっちにしろそのつもりなんだから、一日くらいうだうだしたって良いじゃないか。
……さてと、昼飯でも食いに行くか…」
身支度を整えたジュリアンが外へ出ようとすると、ちょうど通りがかった宿の女将がジュリアンを呼び止めた。
なんでも、昨日、ジュリアンを訪ねて若い男がやって来たという。
女将の話す男の風貌から、それはおそらくポールのことだろうと思われた。
「地震のことを心配して来てくれたのかな?
ポールには悪いことしたな…
もう仕事に行ってるとは思うが、念のため行ってみるか。」
ジュリアンはポールの家を訪ねたが、やはり家には誰もいなかった。
ポールは今日から仕事だと言っていた。
きっと朝早くにでかけたのだろうとジュリアンは考えた。
結局、その日、ジュリアンは一人でだらだらと怠惰な一日をすごしたのだった。
「この町にいても仕方ないし、明日発とうかな。」
『そうか、それも良いだろう。
ここでだらだら過ごすよりはその方がマシだな。』
ジュリアンは、次の日、町を離れることを決めた。
- 79 -
しおりを挟む
コメントする(0)
[*前] | [次#]
トップ
章トップ