「……戻ったのか?
えらく暗いな…いつの夜だ?」

ジュリアンは、懐中時計に目を落とす。
時計の針は、3時過ぎを指していた。



「真夜中じゃないか!
一体、今日はいつなんだ?」

『わからん…』

「ちょっと見て来る。」

ジュリアンは、外へ飛び出し、酒場へ向かった。



「…あんたはさっきの…なんだい?忘れ物かい?」

酒場には酔いつぶれた数人の男がいるだけだった。



「さっきの?
あ…えっと…ポールやネイサンは?」

「もうとっくに帰ったよ。」

「そうか…あの…俺はポールとネイサンと一緒に…夕方前にここに来たんだよな?」

「そうだよ。忘れたのかい?」

「ハハハ…俺、酔ってたからな。
じゃあ、ありがとな!」

作り笑いを浮かべ、ジュリアンは酒場を後にした。







「こりゃあ、地震の1日前だな。
時間が時間だし今からネイサンの家に行くわけにはいかないよなぁ…」

『そりゃそうだな。』

「よし!じゃあ、明日の朝だな!
明日の朝、ネイサンがでかける前になんとかすることしよう。
あいつがいつでかけるかわからないし、今夜はあいつの家の傍で見張ることにするよ。」

『いくらなんでもそんなに早くには出かけないだろう。
一度、宿に戻ったらどうなんだ?』

「いや、ここでしくじったら元も子もなくなっちまうからな。
もし、うとうとしてたら起こしてくれよ!」

『あぁ、わかった。』

ジュリアンはネイサンの家の庭の片隅に腰を降ろすと、身体を丸め夜が明けるのを待った。




『ジュリアン、起きろ!
ネイサンが出て来たぞ!』

「えっっ!?えらく早いな!」

ジュリアンは、目をこすりながら、まだ太陽が顔を出しきっていない空をみつめた。



「ジュリアン!どうしたんだ、そんな所で…」

「あ…あぁ、よ、酔っ払って寝ちまったようだ。
ここはあんたの家だったのか?
い、いや〜、偶然だなぁ…」

ジュリアンは不自然な程の笑顔を浮かべた。



「何やってるんだ。風邪ひかなかったか?
あ、ジュリアン、これは妻のシャーリーだ。」

「おぉっ!その人がネイサンの自慢の奥さんだな。
さすがに別嬪さんだな!」

「お世辞は良いよ。
それより、俺は今から仕事に行くんだが、良かったら、シャーリーに何か作ってもらって食べて行けよ。」

「いや、俺もあんたと一緒に炭坑に行くよ!」

「一緒に?なんでそんなことを?」

「え…えっと、それはだな…
……そう!金がなくなって来たから、炭坑で働かせてもらおうかなぁ…なんて思ってさ。
それで、どんな所か見てみたくて…」

「そうか、わかった。
なら、今から一緒にいくか。
でも、腹は減ってないか?
親方には話しといてやるから、明日、ポールと来たらどうだ?」

「いや、今、一緒にいくよ!」

ジュリアンは、計画通りにネイサンと炭坑に向かった。


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