「嘘だろ…」

ランプの灯りに照らされた鉱山を見て、男達は言葉を失った。
鉱山の入り口は崩れ、土砂にすっかり埋もれていたのだ。



「おいっ!ジュリアン!
ネイサンが家に戻ってないってのは、間違いないんだろうな!」

「あぁ、奥さんに直に聞いたんだから間違いない…」

「じゃあ、もしも、ネイサンがここに来てたら…」

「ば…馬鹿野郎!!
そんなことがあってたまるか!」

「……む…無駄骨になると思うが、念のためだ!
皆!暗いから気を付けろよ!」

使わずに済むことを願いながら持ってきたシャベルで、男達は土砂を掘り始めた。
暗がりでの危険な作業だが、掘ることには慣れた男達だ。
手際良く土を掻き出していく。
ネイサンはどこか違う場所にいて、これが笑い話になることを願いながら、男達は黙々と掘り続けた。



「ま、まさかっ!!」



土を掘る音だけが聞こえていた坑内にポールの声が響いた。
その声の元に集まった男達が目にしたものは、土砂にまみれた靴らしきもの…
鬼気迫る緊迫感と不自然な程の沈黙がその場に広がった。
一瞬の間を置いて、皆は、そのあたりを慎重に掘り始めた。




……程なくして、そこには誰もが見たくなかったものが姿を現した……



「ネイサン……なんで、こんなことに…」

ポールは、土砂にまみれ茶色くなったネイサンの亡骸を抱き締め、坑内には押し殺したすすり泣きが広がった…








「ど…どうしてこんなことに…!!
嘘…嘘よ!ネイサン…目を開けて!!」

シャーリーは変わり果てた夫の姿に泣き崩れた。
彼女の涙を止められる者等誰もいない…
ネイサンを運んで来た男達も、男泣きに泣いた。








「俺のせいだ…
俺が、もっと早くに起きてたら…
俺があの場所にいたら…ネイサンを助け出す事が出来たかもしれないのに…!!」

『……馬鹿なことを言うな…
あの場所にいたら、ネイサンだけじゃなくおまえも死んでたかもしれないんだぞ。
おまえは運の良い男だ。』

「運が良い?よくそんなことが言えるな!
ネイサンが死んだって言うのに…
あともう少し早くに外に出ていたら、こんなことには…
……これ、見ろよ…
あいつの傍に落ちてたんだ。
きっとあと少し掘ったらこれが出てたんだと思う…」

ジュリアンは、テーブルの上に紫色の石の塊を置いた。



『アメジストか…』

「……よし!今度こそ、奴にこの石を掘らせてやるぜ!」

『あれをやるのか…?』

「当たり前だろ!!
待ってろよ!ネイサン!
おまえを死なせはしないからな!!」

ジュリアンは、エレスチャルを握り締め、強く祈った。
ネイサンがあんな事故に遭う前に戻るようにと……!!


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