「ここ、良いかな?」

「あぁ、良いぜ。
……あんた、見掛けない顔だが旅人か?」

「まぁな。」

「へぇ、そいつは楽しそうだな。
旅の話を聞かせてくれよ。」

ジュリアンが腰を降ろしたテーブルには数人の男達がいた。
酔いつぶれてその場で眠っている者もいれば、一人でそっぽを向いて黙々と飲んでいる者もいる。
声をかけて来たのは、ジュリアンとほぼ同じくらいの年齢に見える男・ネイサンだった。



「この町は賑やかだな。
しかも、昼間っからこんなに酒場が賑わってるなんてどうしたことだ?」

「今日は、特別だ。
親方の都合で数日仕事が休みだからこんなに混んでるんだ。」

「仕事っていうと…鉱山か?」

「いや、ここにいるのはほとんどが炭坑で働いてる者達だ。」

「おっ、見掛けない顔だな。
新入りか?」

二人の所に割って入って来たのは、ポールという若い男だ。
ポールもネイサンも炭坑で働いているという事だった。



「石が好きとは珍しいな!
でも、石じゃそんなに儲からないだろう?
炭坑で働いた方が金になるぜ。」

「それはわかってるんだが…性分だから仕方ねぇな!」

「俺にも石のことを教えてくれないか。
ほら、よくあるじゃないか。
誕生石とか石の力とかいうやつ…」

「あんた、そういうことに興味があるのか?意外だな。」

「そういうわけじゃないんだけど…ちょっとな…」

ネイサンは、そう言って照れたような微笑を浮かべた。



「ちょっとって、何なんだ?!
あ…わかったぞ!
好きな女にやるんだな!」

「好きなって…女房だよ。
もうじき結婚記念日なんだ。
指輪の一つでも贈ろうかと思ったんだが、どうせならその石を俺が掘ろうかと思ってな。」

「ネイサンは奥さんとすごく仲が良いんだ。
確か、結婚してもう5年だったよな?
それでも、まだこんなにお熱いんだからたまんねぇな。」

ポールは、笑いながらネイサンの脇腹を肘で突いた。



「そいつはうらやましいことだな。
そういうことなら、いくらでも協力するぜ!
奥さんは何月生まれなんだ?」

石の事となると、途端に熱のこもるジュリアンだった。


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