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ジュリアンはもう一度さっきの男に話を聞こうと、ドアを開け宿に入った。

しかし、宿屋の一階にはあの男はおろか、誰もいなかった…



(…そんな…!
ついさっきまであんなにたくさんの人がいたのに…)



ジュリアンの思考が混乱する中、下働きらしい女が箒を持って入ってきた。



「あ、あの…」

「お泊まりですか?」

「…いや、そうじゃないんだ…
おかしなことを聞くようだが…最近、変わったことはなかったか?」

「変わったこと…ですか?
特にはなかったと思いますが…」

「ここの孫は元気にしてるかい?」

「サミュエルですか?
ええ、元気ですよ。
ついさっき、女将さんと市場へでかけたと思いますが、サミュエルになにか…?」

「…い、いや…なんでもないんだ…」



(どうなってるんだ?)

ジュリアンにはまるでわけがわからなかった。
再び宿の外に出ると、ジュリアンはエレスに詰め寄った。



「おい!てめぇ!
説明しろ!一体、何がどうなっていやがる!」

『落ち着け!
こんな所を見られたらおかしな奴だと思われるぞ。』

「そんなこと構うもんか!
それよりちゃんと説明しやがれってんだ!
死んだはずのぼうずはピンピンしてるし、宿屋にいた奴らは突然いなくなってる…これは一体どういうことなんだ?!」

『どうもこうもない。
今はこういう状態なだけだ。』

「あ〜〜〜っっ!イライラするっっ!
いつもいつもわけのわからないことばかりいいやがって!
もっとわかりやすく言えっ!」

『わからないか?
…つまりだな。今はまだ何も起こってはいないということだ。』

「今はまだ…?」

『そうだ。なぜなら、今はあの時より過去の時間だからだ。』

「はぁ??
おまえ、何を言ってるんだ?」

『…本当におまえは手間のかかる男だな。
こんなことなら、おまえにスペシャルな贈り物などやらなければ良かった…』

「スペシャルな贈り物って…『時間』だったよな。
……じゃ、なにか?!その贈り物のおかげで時間が過去に戻ったっていうのか?」

『そうではないな。
時間はそのままだが、おまえが過去に戻ったということだな。』

「な、何?なんだって?」

『もう良い。おまえには難しすぎる。』

「な、なんだと〜!
おまえ、俺を馬鹿にしてるな!」


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