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『わからない奴だな。
入ってきたのではない。出てきたのだ!』
「は?おまえはこのエレスチャルから出てきたというのか?馬鹿馬鹿しい!」
『なぜ馬鹿馬鹿しいのだ?』
「おまえ、本当にいかれてやがるな。
ようし、わかった!
そんなに言うんなら、もう一度、俺の目の前でエレスチャルから出てきて見せろよ。」
『では、まず入らねばいかんな。』
そう言うと男はエレスチャルに手をかざし石の中に吸い込まれるように入っていった。
「な、なにっ…?!」
ジュリアンが目を丸くして驚いていると、今度は石の中から煙のように部屋に現れた。
『これで良いか?』
「…お…おまえ…
一体、なにもんだ!
魔法使いか!悪魔か!もののけか!」
『いや、私はそのどれでもない…そうだな…わかりやすくいうと………』
…わかりやすく言う例えがなかなか思い付かないのか、そう言ったまま、男は腕を組みながら部屋の中を行ったり来たりしている。
「…あの…」
『…エレスチャルの中で…住んでるといっても別にエレスチャルが家なわけではないし、もちろん人間ではないのだし、エレスチャルそのものといっても良いのだが、それではわかりやすいとはいえないだろうし…』
「…あのな…」
『そもそもこの者に何がわかりやすくて、何がわかりにくいというのかがわからんし…』
男はまだ一人でぶつぶつと言っている。
「…あ、あのよ…じゃあ…もしかしたら、『石の精』…みたいなもんか…?」
『…ん?『石の精』…?
……おおっ!確かにそうだ!
人間にはそのように言うのが一番わかりやすいかもしれないな。
そうなのだ。
わかりやすく言うと、私は『石の精』なのだ。』
そう言い終えると男は初めてにっこりと微笑みを浮かべた。
「………なるほどね…」
もちろん、ジュリアンとてそんな話を信じたわけではない。
しかし、それではさっきのは何なんだ?
目の錯覚だったというのか…?
その答えはどう考えてもジュリアンにはわからなかった。
「…すまないが、もう一度だけ、この中に入ってくれないか?」
『おやすいご用だ。』
男はまた吸い込まれるように石の中に入って見せた。
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