『あまり長すぎると年月の感覚がわからなくなるもんだな…』

「誰だ!お前は!」

『私か…?私は…そこに住んでいる者だ。』

「…はぁ?」

『…いや…住んでいるというのは少し違うな…
その中に暮らしている…いや、暮らしているというのもちょっと違う…
う〜ん…何といえば良いのだ?』

「……おまえ、一人で何を言ってるんだ?
だいたい、どこから入ってきやがったんだ?」

『いや、私は入ってきたのではなく、出てきたのだ…』

「出てきただぁ?どこから?」

『だから…それだ…』

男はエレスチャルを指差した。



「おまえ…俺をからかっているのか?」

『いや…からかってなどいないが…』

若い男がジュリアンのそばに一歩踏み出した途端、月明かりに照らされて男の顔が浮かび上がった。
白とも銀色とも薄い虹色とも見える細くしなやかな髪と、透き通るような肌の色はこの世の者とは少し違うように見えた。
しかも、声だけで勝手に男だと思いこんでいたが、その顔を見ると女性のようにも見える。



「お…おまえ…女だったのか?」

『女…?おまえは女の姿の方が良いのか?』

「い、いや、そんなことはない!」

『じゃ、男が良いんだな?』

「お、おぅっ!」

『…元来、私に性別等というものはないのだが…
おまえが男の方が良いというのなら、私は男の姿でいることにしよう…』

「はぁ??
おまえ…もしかして、頭がいかれてるのか?
言ってることがよくわからないぞ。」

『わからない?
では、どういえば良いのだ?』

「…だから…
そうだな。まずは、どこから入ってきたのか…ということに答えてもらおうか。」


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