時折、氷楔と見まごうような透明度の高い良質の水晶も掘り出された。
最初の思惑とは違い、ジュリアンは何時の間にか時を忘れ、夢中になって掘り続けていた。



(ん…?これは…)



凍った土の中にいつもとは違う感触を感じ、ジュリアンはつるはしをシャベルに持ち変え、慎重に堀り進める。



(…これは…!!)



ジュリアンは、手で静かに石のまわりの土を払い除けた。



(間違いない…!)



ジュリアンは、さらに慎重に堀り出し、その石はついに姿を現した。



(エレスチャルだ…!!
しかも、これは多分、スパーセブンエレスチャル…
俺は運が良かった。
以前、ここを掘っていたのが誰かはわからないが、あと少し掘っていたら、こんなに見事なエレスチャルと出会うことが出来たのに…!)

辺りは薄暗くなりかかっていたため、ジュリアンは目を凝らしてじっとその石をみつめる。
幾重にも折り重なった幾何学模様の中にいくつもの鉱物が含まれているのが見えた。
素晴らしい…!
こんな石に出会えるとは…ここへ来たのは間違いではなかった…!
この思いがけない幸運に、ジュリアンの胸は興奮と感動で打ち震えていた。




「どうだった?良い石はみつかったかい?」

「…いや…そんなたいしたもんはなかったよ。
…あ…そうだ。女将さんにはこれをやるよ。」

つい口から出てしまった嘘への謝罪のつもりだったのか…ジュリアンは、女将の目の前に拳より少し小さな水晶のかたまりを差し出した。



「おやまぁ、立派な水晶じゃないか。
……これ、本当にもらって良いのかい?」

「あぁ…プレゼントするよ。」

水晶はジュリアンも嫌いではなかったが、昔から見飽きるほど見てきた。
それに、スーパーセブン・エレスチャルがあれば、もう他の石はいらない…
それ程、ジュリアンはエレスチャルに心を奪われていた。







「…本当に見事だ…」

ジュリアンは、曇った窓ガラスを開け放ち、満月の光にエレスチャルを透かして見ては満足そうな笑みを浮かべる。
中には水分も含まれているのか、虹のような光沢があやしいゆらめきを見せている。



「…お前は、何千年の間、あの冷たい土の中にいたんだろう…」

『……そうだな…どのくらい経つんだろうな…?』

「えっ?!」

突然聞こえて来た声にジュリアンが振り返ると、そこには見知らぬ若い男が立っていた…



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