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「アレク!」
「話はアドニアから聞いた。
ここから逃げるんだよな?」
「その通りだ。
身を隠すのにどこか良い場所はないだろうか?」
「それなんだけどな。
キーファがラーフィンが良いんじゃないかって言うんだ。」
「ラーフィン?でも、それはけっこう遠い国なんじゃないのか?」
「そうだ。
だけど、ラーフィンほど平和で安全な国はない。
どんな事情があるのか知らないけど、あんた達、誰かに追われてるんだろう?
あそこには観光客もあんまり来ないし、おかしな奴が来たらすぐに噂になる。
それに、奴らがいなくなったらすぐに戻れば良いんだし、ちょっとした骨休めのつもりで…どうだ?」
ウォルトは遠いということに少し抵抗を感じているようで、腕を組み、じっとなにかを考えていた。
「アレク、私はセモリュナの町までしか飛べない。
そこから先は案内を頼むぞ。」
「あぁ、任せとけ!」
「しかし、二人で三人を運ぶとなると……」
「……仕方ないな。」
アレクは大げさに肩を回し、運動する仕草を示した。
「それじゃあ、あとのことは頼んだぞ!」
「あいよ!じゃあ、気を付けて行くんだよ!」
「あ、アドニアさん、長い間……」
ダニエルが言葉を言いきらないうちに、アドニアの目の前から、五人の男達の姿が消えた。
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