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「それはまずいですね。
北の町からここはどのくらい離れてるんですか?」
「さほど離れちゃいないよ。
朝早くに出れば、昼過ぎには着くよ。」
アドニアの返事に、ウォルトの表情はさらに険しいものに変わった。
「それで、ライナスさんの店におかしな奴らが来たっていうのは?」
「ついさっきのことらしいよ。」
「そうですか…アドニアさん…アレクに連絡は取れますか?」
「え?あ、あぁ……」
「では、至急、ここに来るように話をつけて下さい。」
「わかったよ、待ってておくれ。」
アドニアが店の方に走って行くのを確かめると、ウォルトはダニエルに向き直った。
「ディオニシス様、すぐにここを出る準備を。」
「え?う、うん、わかった。」
ダニエルは慌てて身支度を整える。
「どうするつもりなんだ?」
「奴らが魔導師だったら、すぐに北の町に飛んで、ここに飛んで来るはずだ。
魔導師じゃないことを祈りたいところだが、どちらにせよ、ここにはいられない。」
「それじゃあ、今からトラニキアの頂上に?」
ウォルトは、その質問に首を振った。
「いや、ディオニシス様のお身体のことを考えれば、すぐに結界をくぐらせるわけにはいかない。
まずは、どこかに身を隠さないと…」
「どこかって…どこに……」
「そのことでアレクを呼んだ。
私が知ってる場所はまだこっちにはあまりないし、一人で二人を運ぶのはきついからな
あぁ、こんなことなら、私も絆の護符ってやつを埋め込んでおきたかったな。
それがあればすぐにアレクの居所がわかるのに…
アレクが見つからないようなら、とにかくセモリュナに飛ぶ。」
「しかし、あそこにはハンターがけっこう出没してるんだぜ。
俺達のことを覚えてる奴がいたら面倒なことになるんじゃないか?」
「そんなこと、今は言ってられないだろう。」
その時、小部屋に、キーファとアドニアを伴ったアレクが唐突に現れた。
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