ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
エミリア4






「そろそろ行きましょうか?」

店の片隅で壁にもたれてうとうとしていたリオは、その声にはっとしたように目を覚ます。



「……あ、エミリア…
行くってどこへ?」

「この近くにおばあちゃんの家があるの。
おばあちゃんは昨年亡くなって今は空き家なの。
小さな家だけど、ここで寝るよりはまだ良いでしょ?」

「え……でも……まだお客さんが…
それにそこまでしてもらっちゃ…」

「良いの。
この人達はどうせ朝まで飲んだくれてるんだから、お酒さえ出しておけば良いの。
さ、早くして。
私も早く寝たいんだから。」

「あ…ごめん……」

エミリアの口調に押しきられ、リオは荷物を持って立ち上がった。
店内には適当な場所で眠り込んでいる客が数名と、まだ元気に酒を飲む客が数名いたが、その客達には目もくれず出て行くエミリアに、リオは慌ててその後を追う。



「ねぇ、お母さんは?」

「さっき帰ったわ。
日によってまちまちなの。
夜明けまで飲んでる時もあれば、もっと早くに帰る事もある。」

エミリアはリオの方を振り向くこともなく、淡々と答える。



「ここよ。
それと、あそこ。
あそこに灯かりがついてる家があるでしょう?
あそこが私の家。」

エミリアの祖母の家は、店から歩いてすぐの場所にあった。
エミリアは、ポケットから出した鍵で扉を開けると、玄関の脇にあったランプに火を点けた。



「部屋は2つしかないわ。
ベッドはそこの部屋。
じゃあ、おやすみなさい。」

「あ…ありがとう。
あ、家まで送るよ。」

「……大丈夫よ。
すぐそこだもの。」

「でも……」

リオの言葉も聞かずに、エミリアは扉を閉め外に出た。
リオは、すぐにまた扉を開け、扉の前でエミリアの姿を見送った。
振り返ることなくエミリアは歩き去り、家に着くと玄関の前でようやくリオの方を振り返る。
それを見て大きく手を振るリオに、エミリアはどこか戸惑ったような表情で小さく手を振り、家の中に入って行った。



「……なんだか悪いね。
泊まらせてもらうなんて。」

「良いじゃないか。
酒場で寝るよりすっとマシだ。
それにここなら、そう早く起きなくても誰かに会うことはないだろうから都合が良いじゃないか。」

「それはそうだけどね。
じゃ、そろそろ寝ようか…」

「こいつ、もう眠ってるぞ。
肩につかまったまま寝るのはこいつの特技だなぁ。」

ラルフはレヴィをみつめながら、関心してるのか呆れてるのかよくわからない声を出した。


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