ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
エミリア5






「おい、リオ!
大変だ!誰か来たぞ!早く起きろ!」

次の日の朝早く、扉を開く音に耳聡いラルフが目を覚まし、慌ててリオに声をかけた。
しかし、リオはぐっすりと眠っており、目を覚ましたのはエミリアの叫び声によってのことだった。



「あ……エミリア……」

エミリアは、口許を押さえ恐怖にひきつった表情でじりじりと壁際に後ずさる…



「エミリア…落ちついて…
……わかってる…君が驚くのも無理はない…でも……」

「ど…どうして私がここに……」

エミリアは怯えた瞳でリオをみつめ、その唇は小刻みに震えていた。



「……エミリア…僕だ。
リオだよ。
ほら、ここにラルフもレヴィもいるだろ?」

「リオ……でも、でも…その姿は……」

エミリアは、混乱したように何度も頭を振る。



「エミリア…実は、僕は呪いのようなものにかかっている。
僕の姿は、その人が一番畏れる人に見えてしまうんだ。」

「……で…でも、昨夜はそんなことなかったわ!」

「そう見えるのは明るいうちだけなんだよ。
夜はそんなことにはならないんだ。」

「そ…そんなこと……」

エミリアは、まだリオの言うことが信じられないかのように、何度も何度も首を振り続けた。



「嘘じゃない。
リオの言ってることは本当のことだ。」

「えっ!」

エミリアの視線が、ベッドの上にいたラルフに移る。



「ラルフ〜…」

溜息混じりにリオが黒猫の名を呼んだ。



「驚かせてごめんね。
この子は猫だけど、人間の言葉が話せるんだ。
彼も僕と同じで呪いのようなものを受けてこんな風になっちゃったんだ。」

「失礼なことを言うな。
驚かしたのはおまえの方だろ。
おまえの変化に比べたら、猫がしゃべることくらい、たいしたことじゃない。
な、エミリア、そうだろう?」

エミリアは、何度か目を瞬かせ、食いいるようにラルフをみつめる。
その間に、リオは荷物から布の袋を取りだし、すっぽりと顔を覆った。



「エミリア、これで大丈夫だろ?」

布の袋をかぶってくぐもった声を出すリオに、エミリアはなんともいえない顔を向け、やがて、小さな笑い声を漏らした。



「……あなたって、本当におかしな人ね。
……それに…あなたもね。」

エミリアはそう言いながらラルフに近付くと、毛並みの良い頭に手を伸ばしそっと撫ぜる。



「一緒に朝食を食べようと思って来たのよ。
今、すぐに用意をするわね。」


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