ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
魔法使いの沼地2


沼地に行けば、マリアンは助かる…やっとの想いで辿りついたその場所で、リオのその期待は無残にも打ち砕かれた。
沼地は、リオが思い描いていたよりもずっとずっと広大なもので、そのどこに魔法使いが住んでいるのかわからない。
まるでそこら一帯が途方もなく大きなベールに包まれているかのような薄気味の悪いその空間は、リオの方向感覚を狂わせる。
そればかりか時間の感覚さえどこか他所とは違うようなおかしな感覚に陥った。



(あ……なんてことだ…)

リオは、大きな木の下に置いて来た荷車を目で捕え、唇を噛んだ。

これで何度目だろうか…
魔法使いを探し、沼地をさんざん歩き回った末に、リオはいつも同じ場所に出て来ていた。



「……兄さん…ありがとう…」

「マリアン、どうした?
気分でも悪いのか?
少し休もうか?」

「兄さん…最後まで迷惑かけて…ごめんね…」

「何を言ってるんだ。
あと少しで魔法使いに会えるんだぞ。
そしたら、おまえはすぐに元気になる。
そうだ、元気になったら、これまでの分まとめて返してもらうからな!」

わざと陽気な声を出し、リオはそう言って笑った。



「兄さん、少し休ませて…」

リオは、沼と沼の間の細い道でマリアンを降ろし、膝を枕にして抱き抱えた。



「……ありがとう、兄さん…
あ……兄さん…見て…
青い月…とっても綺麗ね…」

木々の間から、黒い空に浮かぶ青い満月を見上げ、マリアンは満足そうに目を細めた。



「あ、本当だ。
綺麗な月だね…おまえのおかげで久し振りにこんな綺麗な月を見たよ。」

「……兄さん…手を握って…」

「どうしたんだ?マリアン?
苦しいのか?」

マリアンの顔をのぞきこみながら、リオは細くなった指をそっと握る。
身体は熱で火照っているのに、その指先はまるで氷のように冷たかった。



「兄さん…本当に、ありが……」

マリアンの瞳が閉じ、リオの手の中でその指先から不意に力が抜けた。



「………マリアン?」



その呼びかけに返事はなかった。
マリアンは、信じられない程に呆気なく……旅立った……


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