ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
魔法使いの沼地3


「マリアン…マリアン…嘘…だろ?」

リオは、マリアンのか細い肩を揺さぶり、何度も呼びかけた。



予想していなかったわけじゃない。
いつかこんな日が来ることは、マリアンの様子を見ていればとても自然なことで…
魔法使いのことも、信じているわけではなかった。
ただ…リオにはそれしかすがるものがなかっただけのこと。
そのことは自分でも薄々感じながらも、懸命に目を逸らしていた。
悪いことを考えるとそれが実現してしまいそうで、リオは考えるのが怖かったのだ。

それでも、目の前に訪れた現実は残酷で……




「……マリアン…」

その顔は、いつもよりずっと満ち足りた幸せそうなものに見えた。
火照っていた熱は、まるで元気な子供の頬のようにさえ見えた。
今にも、その目が開いて起き出して来るかのような…そして、にっこり微笑んで「私、病気も治ったよ」と明るく言ってくれるのではないかという妄想がリオの頭をよぎる…



「マリアン……本当に…本当に……逝ってしまったのか?」

リオはマリアンの髪をそっと撫ぜる。



まだどこか信じられない気持ちと、マリアンは死んでしまったのだという冷静な気持ち…
これでもうマリアンは苦しみから解放されたのだという安堵の気持ちと、助けてやれなかったことへの深い後悔…
もしかしたら、自分が馬鹿な話を信じ、マリアンに無理な旅をさせてしまったせいで死期を早めてしまったのではないかという憶測…
様々な想いがリオの胸の中で渦巻き、ざわざわとざわめく…



「マリアン…僕は……」

リオの頬は熱い涙で濡れていた。
それはまるで降りきらない雨のように静かに静かに流れ続ける…
声を上げて泣く事も出来ず、かといってすっぱりと顔を上げることも出来ないもどかしさに、リオは自分の弱さを恥じるように何度も首を振る。



「マリアン……ごめん……
ごめん……」

マリアンの亡骸の傍らで、リオは妹に詫び続けた。
まるで、その死が自分のせいだと言わんばかりに……


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