ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
魔法使いの沼地1








「う……うぅ…」

「マリアン…?
苦しいのかい?
もう少し…あと少しで必ずみつかるから、頑張ってくれ。」

リオは、背中の妹に顔を向け、優しいが力のこもった声でそう伝えた。
リオの背中は妹の発する熱で燃えるように熱く、早鐘のような動悸と息遣いからマリアンが今とても苦しいだろうということは容易に推測することが出来た。
マリアンは痩せ細り、その身体はまるで子供のように軽かったが、この所、ろくなものも食べず、寝る暇も惜しんで歩き続けたリオに、ぬかるんだ道はさらに試練を与え続けた。



(どこだ…一体、どこにある?
ここが魔法使いの沼地であることは間違いない。
……なのに、なぜ、肝心の魔法使いがいないんだ?)

心の動揺を妹に悟られないよう、リオは無理に作った笑顔を浮かべながら、魔法使いを探して歩き続けた。



マリアンが、病を宣告されたのは二年前のことだった。
二人の両親は、炭坑で起こった事故に巻きこまれ同じ日に亡くなった。
リオが12歳、マリアンが8つになったばかりの時だった。
それからは肩を寄せ合いながら二人でなんとか生き延びて来た。
リオは妹を守る事に懸命で、マリアンも幼いながらもそんな兄の苦労をよく理解し、お互いに支え合いながら暮らした。
二人が成長し、苦しい日々からようやく解放された頃、マリアンの身体に突然異変が起きた。
マリアンの病は、まだ原因もよくわからないもので、治療は薬を飲んでその病の進行を少しでも遅くする事だけ。
だが、その薬はとても高価なもので、リオがどれほど仕事を増やしてもおいそれと買えるものではなかった。
発病から一年もした頃から、マリアンは一日のほとんどをベッドの上で過ごすようになった。
その病状がどんどん重くなっていることは…マリアンに残された時間がそう長くないことは、素人目にもはっきりと見て取れた。
なんとかしなければ!…と、気持ちばかりが焦る日々…そんな時、リオはどんな願いでも叶えてくれる魔法使いのことを耳にした。
どうにか魔法使いの住む場所を着き止めたリオは、藁にもすがる想いでその魔法使いの住む沼地を目指した。
売れるものは全て売り、借りられるだけの金を借り、壊れかけた荷車にマリアンを寝かせ、それを引いてリオは昼も夜もなく歩き続けた。
二人がようやく沼地に着いたのはそれから何ヶ月も経った頃のことだった。


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