ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
エミリア14






「……エミリアに会わないで良かったのか?」

「うん、良いんだ。
僕、別れの挨拶は苦手なんだよね。」

リオの肩の上で、レヴィは船を漕ぎながらもうまくしがみついていた。

まだ夜が明けきらないうちに、リオはエミリアの祖母の家を後にした。
ほんの短いメッセージだけを残して…



「何年かしてまたこの町を訪ねたら、あの場所は食堂になってると思うかい?」

「あぁ…きっとそうなってるさ。
……あ、もしかしたら、その頃にはエミリアももう子供がいたりするかもしれないぞ。」

「それはいくらなんでも早過ぎないか!?」

「でも、エミリアの妹にはもう子供がいるらしいじゃないか。
エミリアの母親もまだ若かったし、早婚の家系かもしれないぞ。」

「早婚の家系…か…」

リオはラルフの言葉に俯いて失笑する。



「しかし、本当に人間とは不思議なものだな…
ほんの些細なことで気持ちが大きく変わったり、気持ちが変わるとその人間を取り巻く状況までもが変わってしまう…」

「……そうだね。
小さなきっかけでも、あるのとないのとでは全然違うんだよね。」

「いや…それをみつけられるか、そして掴めるかどうかなのかもしれないぞ。」



「……僕には掴めなかった…」

それは小さな小さな呟きで、ラルフの耳には届かなかった。



「リオ…エミリオはいつか気付くだろうか?」

「……どうだろう?
もう僕の魔法のこと自体、忘れてくれれば良いけどね。」

「そうだな。
瞳の形など少しも変わっていなくとも、本人にそう見えてるだけでこんなにも変われるのだからな。
客達は本当に驚いていたな。
ほんの少し身に着けるものが変わっただけであんなに変わるんだ。
……それだけじゃないけどな。
彼女の心に芽生えた自信がそうさせたのかもしれないな…
エミリアの化粧の腕がもっと上がれば、彼女は見違えるほどの美人になるかもしれないぞ。
それこそ、妹なんか比べ物にならないほどのな。」

「女性の化粧の方が、僕の魔法より凄いのかもしれないね。」

「おまえも、そんな女性に騙されないようにしろよ。」

ラルフの軽口に、リオは明るく笑う。



「ねぇ、ラルフ…エミリアっていくつくらいだと思う?」

「う〜ん…17か18あたりじゃないか?」

「……きっとそうだよね。
マリアンと同じくらいだと思ったんだ。」

「……そうか……あれから、もう…三年経ったんだな…」

「……三年…か……」

リオの青い瞳が薄紫色の空を見上げた。


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