ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
エミリア11






「もうっ、冷やかさないでよ!」

その口調は強いものだったが、エミリアの顔にはそれとは裏腹にとても幸せそうな微笑が浮かんでいた。

その日は来る客全員から、変わっただの、綺麗になっただのと声をかけられ、エミリアはその度に今まで味わったことのない気持ちを味わっていた。
嬉しいがどこかくすぐったいようなその気持ちに、エミリアの心は温かく満ち足りたものに埋め尽くされていった。







「ありがとう。リオ。
本当にありがとう…!」

本来ならば、リオはその日のうちに町を離れようと考えていたが、エミリアにどうしても…と引き止められ、もう一泊することになった。



「少しだけ私の話を聞いてほしかったの…」

いつもより早めに店を切り上げたエミリアは、そう言って、自分のことを話し始めた。
エミリアには、ミッシェルという一つ年下の妹がおり、その妹は母親似で町でも評判の美人だった。
その上頭が良く誰からも好かれるミッシェルに引き換え、父親似だと言われるエミリアは綺麗でないだけではなく成績もごく普通で、ミッシェルにはずっとコンプレックスを抱いていたのだという。



「両親も、ミッシェルのことをそりゃあとても可愛がってたわ。
ミッシェルは可愛いドレスや靴もたくさん買ってもらってた…
家のこともミッシェルには何もさせなかった。
もちろん、酒場になんて絶対に行かせなかったわ。
そういうことは全部私がやらされた。
同じ姉妹なのに、まるでお嬢様とメイドみたいだったわ…
でもね、おばあちゃんだけは違ってた。
おばあちゃんは分け隔てなく…いえ、私の方をずっと可愛がってくれた。
何度も家出したいと思った私がこの町にいられたのは、きっとおばあちゃんがいてくれたおかげだわ。
……でも……」

「……おばあさんが亡くなったんだね…」

エミリアは俯いたまま小さく頷く。


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