ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ
エミリア1






「ようやく暗くなって来たな。」

「そうだね、この時間が来ると僕もほっとするよ。」

「確かあの橋を渡った先に町が…あれ…?」

ラルフとリオが同時に見た橋の袂に、一人の少女が佇んでいた。
前日から降り続いた雨のせいなのか、その下を流れる川には、薄茶色に澱んだ水がかさを増し、激しい勢いで流れて行く…



「まさか、あいつ……」

ラルフの呟きに答えるかのように少女の手が橋の欄干にかかり、真剣な表情でその下をのぞきこむ。



(……ほんの少しの間よ…
ほんの少しだけ苦しいのを我慢すれば……そうすれば後は楽になれる……)

少女の頬を一筋の涙が伝う…
やがて、心が決まったかのように少女の腕に力がこもり、片方の足が欄干にかかったその刹那…



「……おっと。」

少女は、不意に聞こえた若い男性の声に振り返る間もなく、脇腹を抱えられ、その身体は欄干から引き離された。



「な…なにするの!」

「ねぇ、ウィンスターの町ってこっちで合ってる?」

少女のヒステリックな声とは裏腹な落ちついたリオの声に、少女は一瞬戸惑い、言葉を失った。



「……君、このあたりの人じゃないの?
僕、旅をしてるんだけど、確かこのあたりにウィンスターって町が…」

リオは、内ポケットの中から地図を取り出した。



「そ…それなら、こっちよ。
この道をまっすぐ…」

リオが地図を広げるのも待たず、少女は俯きながら小さな声で呟いた。



「悪いんだけど、道案内してくれないかな?
僕、こう見えてもけっこう方向音痴でね。」

そう言って微笑むリオに、少女の強張った顔が僅かに緩んだ。



「……仕方ないわね…良いわよ。
案内してあげる…っていっても、ほら、あそこなのよ。」

少女は、すぐ近くにちらほらと灯り始めた町の灯かりを指差した。



「なぁ〜んだ。
そんなに近くだったのか…」

リオは、灯かりをみつめ失笑する。



「……あなた、旅をしてるって言ったわよね。
じゃあ、宿屋へ案内するわ。」

「いや、僕、お金がないから宿屋には泊まれない。
どこかでちょっと何が食べるだけで良いんだ。
遅くまで開いてる酒場でもあると助かるんだけど…」

「なら、うちに来れば良いわ。
うちは酒場なの。
ちょっとしたものなら、私が作ってあげる。」


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