ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



「ジョシュア!ジョシュア!」

「じいちゃん、どうかしたのか?」

「さっきの詩人さんはもう帰られたのかい?」

「あぁ、今、橋の所まで見送って来たよ。」

「ジョシュア、あの詩人さんはどんな顔をしているんだい?」

老人は、詩人の容姿についてあれこれ詳しく尋ねた。
老人の目は、最近ではすっかり薄くなり、動きや輪郭程度しか見えなくなっている。
アルベールの髪の色や年格好、顔の造りを聞いているうちに、老人の身体が小刻みに震え出した。



「じいちゃん、どうかしたのか?
具合が悪いのか?」

「そうじゃない…そうじゃないんじゃ…
わしはあの詩人さんに会ったことがある…ついさっき思い出したんじゃ!
わしがまだおまえよりずっと小さかった頃じゃ。
わしは初めて見た吟遊詩人の歌声とリラの音色にすっかり魅了され、わしのこんな歌を歌いながらいろんな町を旅して歩きたいと思った。
その詩人さんは、長い銀色の髪をして、緑色の瞳に泣きぼくろがあり、白いリラを持っていた。
とても優しい人で、子供のわしが質問したことにすべて丁寧に答えてくれた。
ただ、ひとつ、わしがわからんかったのは、その人に一生吟遊詩人をするつもりかと尋ねた時のことじゃった。
詩人さんは少し寂しそうな顔をして言ったんじゃ。
『歌い尽せないことがわかっているから歌い続ける』と。
ジョシュア…さっき、あの詩人さんがそれと同じことを言ったんじゃ!」

「でも、じいちゃん、あの人はまだ若いよ。
そうだね…22〜23歳って所じゃないかな?
そんな人が、じいちゃんが子供の頃に出会える道理はないよ。」

「しかし……」

「そうだ…!もしかしたら、アルベールさんのお父さんじゃない?
あ…それにしたって、年が合わないね…」

老人とジョシュアは、この奇妙な話に納得のいく答えをみつけられず、ただ首を捻るばかりだった。


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