ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ







ジョシュアの家は、町からずいぶん離れた山の麓にあった。
この道程を考えれば、祖父が町まで出て来られないということはアルベールにも十分納得が出来た。



「アルベールさん、もうすぐですからね。
こんな辺鄙な所までご足労いただいて、本当に申し訳ありません。」

「私は、始終あちこちを旅していますから、こんなことは少しも苦にならないのですよ。
お気になさらないで下さい。」

「ありがとう…
あなたは本当にお優しい方ですね。
僕……断られることは覚悟してたんですよ。
はした金しか払わない相手のために、こんな辺鄙な場所にまで来てくれる詩人さんがいるわけがない。
でも…行商のおばさんに、町に詩人さんが来られてることを聞いたら、僕、たまらなくなって…
一応、頼むだけ頼んでみようと…いや、もしかしたらそんなことも考えてはいなかったのかもしれません。
とにかく、僕は……」

アルベールは、ジョシュアに向かい優しく微笑んだ。



「わかりますよ、あなたのそのお気持ち…
受け取ったあなたのお気持ちは、私がお祖父様にしっかりとお伝えします。歌に代えて…」

アルベールは、腕に抱えた白いリラをみつめ、独り言のようにそう呟いた。



二人が家に着いたのは、すでに太陽が沈んだ頃だった。

「おや、おかえり、ジョシュア。」

扉を空けると、体格の良い中年の女が二人を出迎えた。



「おばさん、いてくださったんですか!?」

「あぁ、お爺さんは大丈夫だって言ったんだけど気になってね。
少し早いけど、さっき夕食もすませといたよ。
ところで、ジョシュア、もしかしてこの人は…」

「ええ、来て下さったんです!
おばさん、こちらは詩人のアルベールさんです。」

「そうかい!それは良かった!
アルベールさん、この子の願いを聞いてくれて、本当にありがとう。
お爺さんのためにどうかとびきり良い声で歌ってやっておくれよ!」

女は嬉しそうに微笑み、アルベールの背中を力強く叩いた。


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