ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



「詩人さん、うちの祖父はあなたのような詩人さんの歌を聴くのがとても好きなんです。
なんでも若い頃は、自ら吟遊詩人になりたいと考えたこともあったそうです。
ですが、その夢は叶うことはありませんでした。
両親や兄弟のため、働かねばならなかったからです。
やがて、両親も亡くなり、兄弟達も皆独立した頃、僕の両親はある詐欺にひっかかり、多額の借金と僕を残していなくなってしまいました。
それから、祖父はまだ幼かった子供を引き取り、借金を返しながら僕をここまで育て上げてくれたんです。
これからは僕が働いて祖父に少しずつでも恩返しをしていこう…そう考えていたのですが、二年ほど前に関節の病気が発症し、それからの祖父は急激に弱っていきました。
最近は、身体だけではなく、気持ちの方もずいぶんと弱くなり、塞ぎこむ日が増えて来たのです。
そんな祖父を勇気付けるためにも、一曲で良いのです!
厚かましいお願いだとはわかっていますが……どうか、僕の家で…祖父の前で歌っていただけないでしょうか?」

ジョシュアのすがるような瞳には、うっすらと光るものが浮かんでいた。



「そんなことでしたら、私にも出来そうですね…」

そう言って、吟遊詩人は、少年の前に白く長い指をした片手を差し出す。



「私はアルベール。
あなたのお祖父様のため、心をこめて歌わせていただきますよ。
今からすぐに出掛けますか?」

「あ…ありがとうございます!アルベールさん!
あの……それと、お礼はこれだけしか出来ないのですが……」

ジョシュアは、俯いたまま手の平を開き、その中の僅かな金をアルベールに見せた。



「ジョシュア、私は今日はこの町の皆さんからお心付けをいただきました。
お金ではないものの方が助かります。
そうですね…今から出掛けるのではここへは戻って来られないと思いますから、お宅に一晩泊めていただけないでしょうか?」

「そ、そんなこと…もちろんです!」

「ありがとう、ジョシュア。
とても助かります。」

「アルベールさん…ありがとうございます!
感謝します!!」

ジョシュアは、アルベールの手を強く握り締めた。


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