ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ







(さて、どっちに行こう…?)



私は、極めて短い書き付けだけを残し、こっそりと城を抜け出した。
それは、本気で伴侶をみつけるため!

父上に以前訊ねたことがある。
私の伴侶になる人はどんな人でも構わないのか?と。
そうしたら、父上は大きく頷かれて、こうおっしゃられた。



「おまえが愛する男なら、たとえ平民でも構わん。」と。



でも、その言葉の裏に隠されたからくりに、私は気付いていた。
それは、私が平民と出会う機会など滅多にないということだ。
だから、結局のところは、私の伴侶は、父上の紹介なさる他所の国の王子かまたはこの国の貴族の誰かということになる。
そんなことは最初からわかっていたこと。
きっと、それが私の宿命なんだとも思っていた。
だけど、一晩じっくりと考えて、私はそれに逆らってみることを決心した。



「男なら良かったのに……」



子供の頃から何度となく耳にした言葉。
言わない者達もそう望んでいることに、幼い私は気付いていた。
父上と母上がご成婚なされてから七年も経ってやっと授かったのが私だった。
それが、男ならこの国は安泰だったのに、残念なことに私は女だった。

幼い私がどんなことを考えたのかは覚えていない。
きっと、父上達を喜ばせたいとか、もっと愛されたいという想いだったんだろうと思う。
私は男のような格好を好んでするようになった。
友人達にも、「ジョセフィーヌ」ではなく「ジョッシュ」と呼ばせた。
剣や弓を習い、誰よりも鍛錬に熱を注ぎ、今では他の者に手ほどきをするほどの腕前になった。



だけど、両親は、私が大きくなるにつれ、私のそういう行動を疎んじられるようになった。
それは、おそらく結婚のことを考えられてのことだと思う。
確かに私は本当の男ではない。
伴侶となるのは、女性ではなく男性だ。
こんな男のような私を好む男性は多くはないだろう。



だから、王位を引き継ぐと同時に、私は生まれ変わらなくてはならない。
優しくてたおやかな姫君に……本来の女に……



(私にそんなことが出来るだろうか?)



男の格好をしている時は、心の弱みを隠すことが出来た。
剣や弓の鍛錬をしてる時は無心になれた。
それをやめてしまったら、私は一体どうなってしまうのか…そんなことが私には不安でたまらない。

結局は宿命に逆らうことなど出来ない自分自身が悔しいということなのだろう。



私の負けはわかっている。
だけど、それでも、最後にもう少しだけ抵抗してみたかった。



(もしくは、私はただ「ジョッシュ」との別れを惜しんでいるだけなのかもしれない……)





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