ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



「……君はここで何をした?」

「……ずいぶんとはっきりと聞くのね。」

「聞いちゃいけなかったか?」

ミアリは黙ったままで首を振る。



「私は……絶望を見せてあげたかったの…」

ミアリは、そう言うとおもむろに高い空を見上げた。
その時の記憶を取り戻すかのように、ぼんやりとした眼差しを空に向けて…



「絶望を…?
……おかしなものだな。
私の探してる男と君はよく似たようなことを言う。
……なのに、その心に抱えてるものはまるで違う。」

「どうしてそう思うの?」

「思う…のではなく、そう感じるのだな。
……奴の闇は凍えるように寒く冷たいが、君の闇は温かい…
そのことが却って気の毒に思える程にね…」

「……おかしなことを言うのね。
でも、あなたの言う通りなのかもしれないわ。
私ね…昔から中庸というものが苦手なの。
私の考えることはいつも極端なことばかり。
白か黒…
生か死…
そんな風に、両極のどちらかしか選べなかった。」

ミアリはゆっくりと視線をさまよわせて手元の芝まで降ろすと、意味もなくそれを弄ぶ。



「両極は全くの別もののように見えながら、実は表裏一体…
どちらもがお互いにとって必要なもの…
……私にはそんな風に思えるよ…」

ミアリは手を停め、肩をすくめて小さく笑う。



「あなたのお話はとても難解ね。
そんなんじゃ、お友達が出来ないわよ。」

「でも、君にはわかるだろう?」

「……さぁ、どうかしら…?」

アズラエルの視線に気付きながらも、ミアリは彼の方を向くことなく、その口許に不敵な笑みを浮かべた。



「でも、やっぱりそれは良くないことなのよ。
特に、人間の世界ではね…」

「……後悔しているのか?」

「いいえ…してないわ。
正しいことではなくとも、きっと私にはそうする必要があったんだと思う。
でも、もしかしたら、あれほど大きな犠牲を払わずに済む方法もあったのかもしれない。
私はその方法を思いつく事が出来なかっただけ…」

「そうかもしれないな。
しかし、そういうことがわかるのは、たいがい事が終わってからだ。
つまり、それが正しい事かどうか、最良の方法だったかどうかは、やってみなければわからないものなんじゃないだろうか?
頭の中でどれほど完璧なことを思い付いたにせよ、それはただの思い込みや過信かもしれない。
それに、実行する段になってなにかしらの誤算が起きるってこともよくある。」

「……今のは慰めなのかしら?」

「君にはそんな慰めは必要ないだろう…」

ミアリはアズラエルの方に顔を向け、どこか決まりの悪そうな笑顔を見せた。


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