ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



「なぜ?なぜ、あなたは違うと思うの?」

「それは……
立ち話もなんだし、良かったら少し腰掛けないか?
……こんな所に座りこんでは、その綺麗なドレスが皺になってしまうかな?」

ミアリはくすりと笑う。



「大丈夫よ。
そんなこと、たいしたことじゃないわ。」

ミアリはドレスの裾をつかみ、エレガントな所作でその場に腰を降ろす。
アズラエルはその様子に小さく微笑み、近過ぎもせず離れ過ぎてもいない絶妙の距離を取ってミアリの隣に腰を降ろした。



「……良い所でしょう?」

ミアリは眼下に広がる村の風景を前にして、満足げに目を細めた。
村には動く物も少なく、そのことがとてもゆったりとした時間を感じさせた。



「そうだな。とても良い所だ。
……だが、ここの暮らしは君みたいな若い女の子には少々退屈じゃないのかな?
大きな町に行ってみたいとは思わないのか?」

「そんなこと、考えたこともないわ。」

ミアリは、少しも考えることなくきっぱりとそう答えた。



「それは意外だな。
君はこの村のどこがそんなに気に入っているんだ?」

「そうね…何かしら…
私にもよくわからない。
だけど、大きな町に住みたいなんて思ったことは一度もないわ。
町は用事のある時に行く場所だわ。
住む場所じゃない…
それにね…この村には、とても腕の良い仕立て屋さんもいてくれるの。」

そう言うとミアリはドレスの裾に手をやり、裾を縁取る繊細な黒のレースに目を落し、それを愛しそうにみつめて微笑んだ。



「君は若いくせによくわかってるんだな。
……私もそう思うよ。
暮らすのは町よりもこういう場所の方が良い。」

「でも、仕立て屋さんには興味はなさそうね。」

「そうだな…私は、たまにこうやって話をしてくれる人がいてくれたら…
腕の良い仕立て屋はいなくても構わない。」

その言葉に、二人は同じタイミングで顔を緩ませた。


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