ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



「ごめん……まだ、なかなか乗り越えられないんだ…だめだな…
……俺は、一体、何のために今まで頑張って家族にもあんなに厳しくして来たのか、まるでわからなくなってしまった…なんていうのか…心の中で何かが弾け飛んだような気がしたんだ。
……そして、俺は少年の旅を口実に家を飛び出した。
家にいるのがなんだか辛くてたまらなくて逃げ出したんだ。
一番下の弟はまだ十ニだけど、妹二人がいるから大丈夫だ。
貯めた金も全額置いて来た。
……旅に出て、初めて一人になって……俺は、最近少しずつ心の中が変わっていくのを感じてるんだ。
最初はただなんとなく旅をしてるだけだった。
でも、証書をもらって喜んでる奴を見た時に、なんていったら良いのかわからないけど…素直に俺もあれがほしいって思ったんだ。
同じ年頃の奴らが次々に旅に出るのを見ながら、俺はどうせそんなものには行けないんだってずっと諦めてた。
でも、本当は俺だって行きたかったんだ。
理由はどうあれ、俺は今少年の旅に出てるんだって思ったら、なんだか急に勇気がわいてきた。
こんな風に言ったら不謹慎かもしれないけど…でも、俺は…一度は諦めた夢を実現してるんだから。
……もしかしたら、俺……この旅を終えたら、心の中が綺麗に整理されるんじゃないかって思うんだ。
家を出る時には言えなかった妹達への謝罪やありがとうが素直に言えそうな気がするんだ。
……もちろん母さんや父さんにもな。」

キーファの言葉は、とても率直なものだった。
自分とはあまりにも違うキーファの事情に、マシューは複雑な想いを感じていた。



(僕は、旅に出るのがいやでたまらなかったのに…
それは、もしかしたら僕が幸せだったってこと?
家が楽しいなんて思ったことはなかったけど…僕にはキーファみたいに大変なことも不満も責任も何もなかったんだね…)

マシューはキーファの背中をみつめながら、心の中でぽつりと呟いた。


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