ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



「それにしても、君はどうしてその年まで旅に出なかったの?」

「それは……」

「あ、ごめん…言いたくなかったら言わなくて良いんだ。」

「そうじゃないよ…実はね…」

キーファは、自分の事情についてゆっくりと話し始めた。
キーファの家は、母親と妹が二人、弟が一人の五人家族だった。
母親の身体があまり丈夫でなかったこともあり、キーファが一家の大黒柱として働かざるを得ない状況でそのため、少年の旅にも出られなかったのだという。



「そうだったのか…大変だったんだね。
……あ、わかった!妹さん達も働ける年になったから、君もようやく安心して旅に出て来たんだね?」

マシューのその言葉に、キーファは複雑な笑みを浮かべながら首を振る。



「違う…俺は…逃げ出して来たんだ。」

「逃げ出して……?」

キーファは黙って頷いた。



「……おふくろが死んだんだ。
信じられないくらい呆気なかった…畑で突然倒れて…あっという間のことだったんだ。
俺は…皆が楽な生活を出来るようにと、毎日そればっかり考えて…おふくろとゆっくりと話すこともなかった。
とにかく、一分一秒でも多く働くことが皆の幸せに繋がるんだって信じて、父さんが亡くなってからはとにかくがむしゃらに働いた。
家族はきっとそんな俺のことを嫌ってたと思う。
俺は、家族の家計も取り仕切っていて、少しの無駄も許さなかった。
弟や妹の誕生日にも、何も買ってやらなかった。
でも、それは……もっと広くてマシな家に移りたかったからなんだ。
なんせ、俺の家は酷い家でな…隙間風がびゅうびゅう入るから、おふくろは風邪をひいてばかりだった。
妹達も何年か前から働くようになってたし、そのおかげでもう少しで頭金が払える所まで来てたんだ。
そんな矢先におふくろが……」

キーファはそう言うと言葉を詰まらせ、マシューにくるりと背を向けた。
マシューは、キーファの心情を想うとかける言葉がみつからず、黙ってそっと俯いた。


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