ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ







「えっ!それじゃあ、もしかしたらあの時のあの男が…!?」

町のざわめきを不審に感じ、キーファが町の者に話を聞いた所、護送中の強盗犯が逃げ出したということだった。



「おまえ達、それらしき男を見たのか?」

キーファは、自警団の男に声をかけられた。



「はい、とにかくものすごい勢いで走って行く男がいて…」

「どんな男だった?」

「どんなって……見たのは一瞬だったし…」

「あのぉ……」

言葉に詰まるキーファの横から、マシューが小さな声を出した。



「なんだ?」

「紙と鉛筆を貸してもらえないでしょうか?」

「紙と鉛筆…?」







「そうだ!こいつだ!間違いない!」

さらさらと鉛筆を走らせたマシューは、描き上がった似顔絵を差し出し、その場にいた者達を驚かせた。



「あんた、絵がうまいんだなぁ…」

「僕、絵を描くのが子供の頃から好きだったんだ。」

「こりゃあたいしたもんだ。
あんな一瞬見ただけでこれほど描けるとはなぁ…」

キーファは何度も絵を眺め、感心したようにみつめ続けた。
今まで家族くらいにしか絵を見せたことのなかったマシューは、照れ臭さと同時に誇らしげな良い気分を感じ微笑んだ。
二人の証言から、犯人の逃げた方向に確信を持った自警団の男達は、すぐさま男の捜索に乗り出した。



「おい!マシュー!
俺達も行こうぜ!」

「な、なに言ってるんだよ!
逃げたのは強盗犯なんだよ!」

「だから、そんな奴を捕まえることが出来たら大きな手柄になるじゃないか!
証書の格が上がる!
さ、行くぞ!」

「あ…そ、そんな…」

キーファに腕を掴まれたマシューは、そのままキーファにひきずられるようにして走り出した。







「なかなかみつからないもんだな…」

「当たり前だよ。
犯人だってきっと必死で逃げてるんだから、そんなに簡単にみつかるわけないよ。
第一、そんな危険な犯人、みつけたくもないよ。
ねぇ、後は自警団の人達に任せて僕達は帰ろうよ。」

「このあたりに身を潜めるような場所はないのかなぁ…
たとえば、洞窟みたいな…」

マシューの言葉を聞いていないのか、聞いていないふりをしているだけなのか…キーファは、あたりをきょろきょろと見渡す。



「……洞窟?」

「知ってるのか?」

「う…うん、昨夜泊まった所がすぐそこにあることはあるんだけど…」

「よし!じゃあ、そこに案内してくれ!」

有無を言わさぬキーファの態度に、マシューは渋々道案内を始めた。


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