ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



「どっちかにって…
じゃあ、特に行き先は決まってないってことかい?」

青年の人懐っこい笑みが、人見知りなマシューの心をほぐす。



「う…うん、まぁね。」

「そっか。実は俺もそうなんだ。
こんな年でおかしいと思うかもしれないけど……俺、実は今少年の旅の途中なんだ。」

「えっ!君も!?」

「君も……って、じゃあ、あんたも?」

青年は、少し驚いたようにマシューをみつめた。



「そっか…あんたもわけありなんだな。」

マシューは、その言葉に曖昧な笑みを浮かべて誤魔化した。



「ところで、君は地図は持ってる?
この先がどういう町に続いて……」

マシューが話し始めた時に、片方の道からものすごい勢いで男が走って来るのが見えた。
男はマシュー達をみつけると咄嗟に顔を伏せ、二人の脇を駆け抜けて行った。



「……なんだろ?えらく急いでたみたいだね。
魔物でも出たのかな?」

「それはないさ。
このあたりには魔物はほとんどいないからな。」

「そうなの?どっちも?」

「あぁ、俺はこの先のことはしっかりと聞いて来た。
今の男が走って来た道を行くと、すぐにサウザークって町がある。
こっち側の道から繋がってる町はちょっと遠い。
今夜中に着けるかどうかわからないから、俺はこっちに行こうと思ってたんだ。」

「そうなんだ。
じゃあ、僕もそうするよ。
あ…あの、僕、マシューっていうんだ。」

マシューは恐る恐る青年の前に片手を差し出した。



「俺は、キーファ!
よろしくな、マシュー。
……ところで、あんたいくつだ?」

「えっ!……ぼ、僕は……二十歳だよ。」

力強くマシューの手を握り締めたキーファの問いに、マシューは咄嗟にサバを読んで答えた。



「そっか、じゃ、俺の方が一つだけ年上だな。
やっぱり俺より年上で少年の旅をしてる奴なんていないよな。
恥ずかしいけど、ま、それも当然だよな。」

「ふ、ふ〜ん…ま、良いじゃない。
年のことなんて、さ。」

どこか上ずった声を出すマシューは、無理な笑顔を作りながら、町へ向かって歩き始めた。


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