ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



ディランは、昨日初めて森の外に出てはしゃぎすぎ、はぐれた母親を探してるうちに、人間の声が聞こえて慌てて逃げようとした所、道に転がり出てしまったのだという。



「本当にあの時はもうおしまいだと思ったよ。
まさか、あんなにすぐ向かってくるとは思わなかったから、反撃なんてきっと何一つ出来なかったと思うんだ。」

「あの人達は訓練を受けた剣士だからよ。
つまり、人間の中でも特別な人なの。」

「そうだったの…だから、あんなに素早かったんだね。
でも、どうして魔物はそんなに人間に嫌われるんだろう?」

ディランは、寂しげな表情でキャロラインの顔をみつめた。



「そうね…きっと人間は魔物が怖いのよ。
怖いから、あなたみたいな魔物をみつけたら強くなる前に殺してしまおうとするんだわ。
そんなの本当は良くないことなのに…」

「……君は優しいんだね。
ねぇ、いつか、人間と魔物が仲良く暮らせる時が来るかな?」

「ええ、きっと来るわ!」







それからのキャロラインは、過酷な運命をはね返すように、森の生活になじむための努力にがむしゃらに励んだ。
身の回りのことはすべて使用人任せだったキャロラインにとって、それは大変なことだったが、決して弱音を吐かず、歯を食いしばって頑張った。
魔物達はそんな彼女の様子を知りながらもギディオンの判断に不満を抱いていることは変わらず、ディラン以外、彼女の家を訪ねる者はめったにいなかった。



(やっぱりだめね……)



瞬く間に数ヶ月が過ぎ、キャロラインも森の生活にも慣れては来たが、それでもまだ一縷の望みを捨ててはいなかった。
時間があるとキャロラインはいつも森の中を出口を求めさ迷った。
森自体に魔法がかけてあり、出口はここに住む魔物でなければ決してみつけられないことはディランから聞かされてはいたが、それでも、キャロラインは諦めてはいなかった。
本来、人間が迷いこむ筈がないといわれる森の中に迷い込んだのだから、出られるかもしれない…そんな小さな希望を胸に、キャロラインは時間さえあれば森の中を歩き回った。
しかし、いつもさんざん歩いた挙句、最後には広場に出て来てしまう。
その意地悪な魔法にくじけそうになりながらも、キャロラインはその習慣をやめることはなかった。


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