ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



「……ねぇ、大丈夫?」

突然、目の前に差し出されたハンカチに、キャロラインは驚いて顔を上げた。



「あ…あなたは…さっきの……
確か、ディランだったわね。
ありがとう。」

キャロラインは、起き上がり、差し出されたハンカチで涙を拭う。



「ディラン、さっきはどうもありがとう。
あなたのおかげで、私、死なずに済んだわ。」

「ううん、僕だって君に命を救われたんだもん。
でも、本当に良かった?
君はこれからずっとここで暮らさなきゃいけないんだよ。」

「……ええ。
神父様がおっしゃってたわ。
命ほど尊いものはないんだって。
どんなに苦しいことでも、前向きに生きていたらきっと良いことがある。
神様はその人間に乗り越えられない試練は決してお与えにならないんですって。」

まるで自分自身に言い聞かせるように、キャロラインはゆっくりと話した。



「僕に出来ることならなんでも言ってね。
僕は君の味方だからね!」

「ありがとう、ディラン。
あ、私キャロラインっていうの、よろしくね。」

そう言って隣に腰掛けた少年の頭を、キャロラインは優しく撫ぜた。
見た目にも髪の毛の感触もまるで人間と違う所はなく、この子が魔物だということがキャロラインには信じられない想いだった。



「……ねぇ、ディラン、さっきの人だけど……」

「あぁ、ギディオンさんのことだね。
彼はこの森の守護者だよ。
言ってみたら責任者みたいなもんだね。」

「そうなの…
それで……ここには、人間はよく迷いこんでくるの?」

「ううん、めったにないよ。
ここには本来人間が入れないように結界が張られてるんだ。
だけど、どういう加減か、ごく稀に迷いこんで来る人間がいる。
僕が産まれてからは君が初めてだけどね。」

「そうだったの…」

キャロラインは、ディランに森のことをあれこれと尋ねた。
この森にいる魔物は特別な者達で、この森では皆、人間の姿をとり人間と同じような生活をしているのだという。



「特別って…どう特別なの?」

「僕、詳しいことはわからない。
でも、大半の魔物は僕達みたいに姿を変えることは出来ないんだって。
ここにいる魔物達は力も特に強いから、人間の方から襲われた時以外には手を出すことは許されてないんだよ。
僕も、大きくなれば今よりずっと強くなるらしいけど、今はまだ普通の魔物と変わらないから、昨日もあのままだったらきっと殺されてたと思うんだ。」

そう言って、ディランは小さく身震いした。


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