ルカの赤い箱…お礼企画 | ナノ



(あら…あれは……)



少し離れた場所に、キャロラインはギディオンの姿を見止めた。
ギディオンはあまり皆の居住区には姿を現さず、一人で森のはずれの自宅にひきこもってるようだった。
何度か、興味本意からディランにギディオンの家の近くに連れて行ってもらったことはあったが、キャロラインにはなかなかその場所を覚えることは出来なかった。



(あんな所で一体何を…)

ギディオンは、花を手向け、ある一点をじっとみつめていた。
その横顔は、たとえようのないくらい哀しそうなもので、キャロラインは胸が痛くなるのを感じた。







「あぁ、それなら多分、ここに迷いこんだ人間の墓場だよ。
あの場所に入れるのは森の守護者だけなんだ。
……やっぱり、ギディオンさんも辛いんだね…
ギディオンさんは優しい人だからね…」

「人間の……!
そうだったの…」

「そりゃあ、誰だっていやだと思うよ。
きっと、掴まった人間達は誰だって命乞いをすると思う。
必死になって助けてくれって願うと思うんだ。
でも、それをギディオンさんは……」

ディランは、唇を噛み締め悲しそうに俯いた。



「……ギディオンさんはこの森の守護者なんでしょ!?
責任者なんでしょ?
彼の権限で助けてやることは出来ないの?」

「……それは無理だよ。
森の守護者だからこそ、どうしてもやらなきゃならないんだ。
……たとえ、それがどんなに辛い事でもね…」

「ギディオンさん……」







(あ!やった!ここだわ!ついにみつけたわ!)



キャロラインは、ギディオンの家の扉の前で大きく息を吸いこむと、気合いを込めてその扉を叩いた。



「ギディオンさん、おはようございます!」

扉を開けたギディオンは、思いがけない来客に驚いたような表情を浮かべたが、やがていつもの穏やかな表情に戻り、ゆっくりと答えた。



「一体どうしたというのだ?今はもうおはようという時間ではないと思うが…」

「ギディオンさんと朝食をご一緒しようと思って出て来たんですが、なかなか家がみつからなくてこんな時間に…」

そう言ってキャロラインは子供のように無邪気に笑う。



「朝、家を出て、今、ここに辿り着いたというのか…
なんということだ。
かたつむりでも、もう少し早く着くだろう…」

キャロラインの顔を見ることもなく冷たくそう言ったギディオンに、なんと返せば良いのかと戸惑うキャロラインに、ギディオンが言葉を続けた。



「何をしている。
入らないのか?
朝食には遅いが、ちょうど昼食をと思っていた所だ。」

「えっ!?
あ…、は、はいっ!お邪魔します!」


- 195 -

しおりを挟む
コメントする(0)

[*前] | [次#]

お礼企画トップ 章トップ

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -