「王様、王妃様、今時『男』がつくような名前は流行りませんぞ。
ミカエル様『かば太』や『ごり也』などいかがでしょう?」

「ルー爺……」



ミカエルの瞳に殺意が宿る…



「は………ははははは………
ミカエル様、冗談です!じょーーーーだんですってば!」

殺意を感じ取ったルーファスは、作り笑いを浮かべ、無理に笑った。



「ほ、本当は良い名前を考えておるのです!
『シーサー』なんていかがでしょうか?」

「『シーサー』?
知ってる!俺、その名前、知ってるぞ!
大昔の異国の英雄の名前だな!
絶世の美女と結婚した英雄だ。
ルー爺にしては良いセンスしてるじゃないか!
うん、それに決めた!
こいつの名前は『シーサー』だ!!」

赤ん坊を抱いて喜ぶミカエルを尻目に、部屋の片隅に集まる国王と王妃とルーファスは小さな声で囁きを交わす。



「これが『シーサー』というものなのです。
異国の南の島の魔除けだそうです。」

ルーファスは押し殺した声でそう言いながら、二人に一枚の写真を見せた。



「まぁ、鼻のあたりなんてあの子にそっくりだわ!」

「そうでしょう?
私もこれを初めて見た時は、オニガワラさんの親戚かと思ったくらいです。」

「このシーサーの方が少し男前だがな!」

「まぁ、あなたったら…!」

三人は肩を震わせ、必死で笑いを噛み殺す。







その後も、シーサーはすくすくと元気に育って行った。



そして、数ヶ月の時が流れ……



「そういえば、カパエル様とアンジェリーヌ様のお子様ももうそろそろでございますな。
どちらに似てもさぞかし可愛らしいお子さんでしょうなぁ…」

「そうか…あいつらの所ももうそんな時期なんだな…」



ミカエルの頭に、ふと黒い考えが浮かんだ。



(そうだ……!!
もしも、アンジェリーヌの産んだ子がカパエルの元の顔にそっくりだったら…!
ふっふっふっ…これはうまく使えるかもしれないぞ!
カパエルは馬鹿だから、「この子がこんなにどっちにも似てないのは、アンジェリーヌがお前を騙して浮気したってことだ!あれはおまえの子じゃないんだ!」って炊き付けて…
うまくいくと、離婚問題に発展するかもしれない!
そしたら、そこで俺がアンジェリーヌにうまくとりいって…
……アンジェリーヌを俺の第2夫人にすることも夢じゃない!!)



「ふふふふふ……」



(ミ…ミカエル様…
また良からぬことを……!)

ルーファスの頬に一筋の冷たい汗が流れた……



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