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ずいぶんと歩き、皆の身体にも疲れが出始めてきた頃、ヴェールが声をあげた。
「あ!あそこに小屋があります!
あそこで休ませてもらいましょう!」
それは当然、ヴェールが長い間暮らしていたあの小屋だ。
レヴやサリーもここではしばらくの間暮らしたことがある。
しかし、そのことをジネットに気取られないようにしなくてはならない。
一行は少しカビのにおいのする小屋の中に入り、小さなランプに灯りを灯す。
「こっちにも部屋がありますよ!
キッチンもあるし、ここなら、十分泊まれそうですね!」
「おそらく、ここは案内人が住んでた小屋なのだろうな。」
レヴとヴェールはジネットに聞こえよがしにわざとらしい会話を交わした。
「ここが案内人の住処だったとしたら、この近くに水場もありそうですね。
ちょっとこのあたりを見て来ます。」
「私も行こう!」
そう言ってヴェールはキッチンの物入れから大きな水瓶を手にし、そのまま二人は外へ出ていった。
「…ヴェールさん、どうしてあそこに水瓶があるってご存知だったのかしら?」
「あ…あ、ヴェールは一人暮らしが長かったからね。
そういうことにはやたらとカンが働くんだよ。」
「…そうですね。
ヴェールさんは細やかな神経をお持ちの方ですもんね…」
ジネットの言葉に、サリーはほっと胸をなでおろした。
「サリーさん、食事の準備でもしておきましょうか?」
「でも、水もないしさ。
二人が帰って来てからで良いんじゃないかい?」
「…それもそうですね…」
そう言いながらもジネットはキッチンをあれこれと見てまわる。
そして、ジネットは戸棚の中にあるものを発見した。
(…これは…!!)
おそろいの三つのカップの片隅には、イニシャルが小さく彫りこまれてあった。
一つは「O」、もう一つは「D」そしてもう一つには「V」というイニシャルが…
(「O」はオルガ様、そして「D」はオルガ様のご主人のダニエルさん…
すると、案内人さんは「V」
案内人さんは「V」から始まるお名前なんだわ!!)
無理を言ってでもここに来て良かった!とジネットは興奮した。
小さな手がかりではあるが、今までわからなかった案内人の名前の一部がわかったのだから…
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