8
ジネットは込み上げてくる熱い想いを押さえるのに必死だった。
他にも何か手がかりになるものはないかと探してみたが、特にこれといったものはみつからなかった。
キッチンには必要最低限のものしか見あたらない。
「サリーさん、私、部屋の中に風を入れてきますわ。」
「私も行くよ!」
「いえ、一人で大丈夫です。サリーさんはゆっくりしていて下さいな。」
ジネットはそう言って奥の部屋へ入って行った。
サリーはそんなジネットの様子を物陰からそっと見ていた。
部屋に入るとジネットは窓を空けるよりも先に、引出しや戸棚の中を調べ始めた。
しかし、ジネットの探していたものは見つからなかった様子で、ジネットは小さくため息を吐いていた。
(ジネットは何を探しているんだろう…?
無理にここに来たがったのは、何か探してるものがあるせいなのか?)
その時、ドアが開く音がして、レヴ達が帰って来た。
「おかえり!」
「やはり思った通り、この近くに泉がありました。」
「それは良かったですわ。
では、食事の準備をしますね。」
ジネットはなにもなかったような顔をしてそう言った。
「ジネット、あたし、歩き過ぎてちょっと疲れたから、食事の準備はあんたにまかせて良いかい?」
「え…ええ。
かまいませんよ。」
食事の準備をジネットにまかせたサリーは、その間にさっき見たことをレヴやヴェールに報告した。
「つまり、ジネットさんはこの家で何か探したいものがあって、ここへ来たがったということだな。」
「何でしょう?
ここには価値のあるもの等何もないはずですが…」
「…もしかしたら、彼女は君やお母上のことを何か知っているのではないか…」
「えっ?!」
「いや、君とお母上というよりは『森の民』だな…」
「彼女が森の民の何を知っているというのです?」
「いや…それはわからないのだが、こんな所に価値のあるものが…いや失礼。
彼女が探しているものは宝石等のような一般的に価値があるものではないと思うのだ。
きっと別の意味で価値のあるもの…」
「それが森の民とどんな関係があるっていうんだい?」
「…それは……」
「あ〜〜〜!!」
サリーの大きな声に、レヴとヴェールは目を丸くする。
「なんだ、いきなり大きな声を出して…」
- 30 -
しおりを挟む
[*前] | [次#]
ページ:
戻る