しかし、ジネットの体調はすでに気力だけではどうにもならない所まで来ていた。

家事をすることさえ、ままならない。

子供のために野菜や果物を口にしようと思うのだが、まるで喉を通っていかない。
仕方がないので、なるべく日光に当たるようにしていたが、外にいると頭が割れそうに痛くなってくる。

ただ、日記だけはなんとか書き続けた。

最初はまだ楽しいふりをして書くことが出来たが、日が経つに連れてそんなことも書けなくなってきた。
予定日まであと何日というカウントだけが記される日が続いた。



(ヴェールさん、助けて!)

ペンを持つ手にももう力が入らない。
ジネットの身体は熱く燃えるようだった。
水が飲みたいと思っても、ジネットにはもはやそこまで行く体力がなかった。

意識が時々途切れるようにもなっていた。



(頑張るのよ…この子だけはなんとしても無事に産まないと…!)

そう思うのだが、今が何日なのかもわからない…

ジネットの瞳から、熱い涙が溢れ出す。

もう自分はきっと死んでしまうのだ…
そんな風に感じた。
せっかく授かった子供を産むことも出来ず、愛するヴェールにも会えないままに…



(なぜ?一体なぜこんなことに?
少し前まであんなに幸せだったのに、なぜこんなことに…?
私の身体はどうなってしまったの?
これはお産のせいじゃない…!)

涙のせいで息苦しさがさらに増し、ジネットは息が止まりそうになり、咳き込んだ。

その時、ジネットのおなかに激しい痛みが走った。



(陣痛だわ…きっと陣痛が始まったんだわ…)

赤ん坊がこの世に出てこようとしている…
その嬉しさよりもジネットの心の中には不安の方が大きく渦巻いていた。

痛みの感覚はだんだんと短くなってくる。

痛い…痛い…
胸が苦しい…
誰か、誰か助けて…!

ジネットは痛みと苦しさにもがき続け、その顔には油汗が吹き出していた。

教えてもらったことももう出来ない。
身体を自由に動かすことさえ出来ないというのに、出産後の処理等出来るはずがない。
それよりもこの子を無事に産むことが出来るのか?!
狼煙をあげるのも無理だ。そしたら、この子はどうなる…!?
せっかく産まれてきてくれたのに、それを死なせてしまうことにでもなってしまったら…

焦りと不安が一気にジネットを包み込む…



(神様…どうか、この子を助けて!!
ヴェールさん、母さん…!)



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