「ねぇねぇ、式の日取りももう決まってんの?」

「そんなこと決まってませんよ。
いつか、時期が来たら…ってことです。」

「ねぇねぇ、レヴ聞いた?!
こんなに早く婚約するなんて聞いたことないよね。
まいったな。
告白からまだ数日しか経ってないっていうのにさ。」

「だから、婚約などではありませんって!
…将来…そうなれたら嬉しいという気持ちを伝えただけですよ。」

「照れるな、照れるな!
ヴェール、ジネットに早く婚約指輪買ってやんなきゃ!」

「サリーさん、指輪の儀式は森の民にはありませんわ。
私は、レヴさんにいただいたこのルビーだけで十分なんです。」

「ですが…それではヴェールが悪い気がするのではありませんか?
その指輪ははずされた方が良いのでは?」

「私にはそんな気持ちはありませんよ。
レヴさんは私にとっても大切な方です。
そのレヴさんがジネットさんに贈られたものなのですから…
それに、この指輪はジネットさんによく似合ってる…」

「ありがとう、ヴェールさん…」

ヴェールとジネットの視線が絡み合う。



「なんだか、お熱いね…
あぁ、この先ずっとこんな風にあてられっぱなしだなんて先が思いやられるよ。」

「からかわないで下さいよ、サリーさん!」

「ジネット、あたしにもハンサムな森の民を紹介しておくれよ。」

「ナイーヴな森の民は、君の毒気にあてられたら危険なんじゃないか?」

「毒きのこみたいに言わないでおくれ!」

まるで魔石のことが夢かなにかのことだったと思えるほどに、穏やかな日々が続いていた。
レヴ達はいったん星の町へ戻ると、そこから先の町へ進んで行った。

そこはなにもない小さな町だった。
町のまばらな商店等を訪ねたが、予想通り収穫といえるようなものは何もなかった。
特に有効と思える手だてはないため、宝石についての変わった話を尋ねてまわることにしたのだが、この町では宝石に興味を示すような者さえほとんどいなかった。

そんな所に長居をしても仕方がないと、一行はさらに先の町へと向かった。
そのあたりは小さな町や村が続き、大きな町へはまだずいぶんかかるという。
そのせいか、いくつ町をまわっても何も目新しい話は聞かれる事はなかった。
耳にするのはそのほとんどが宝石の色や大きさに関することばかり。
たまにあるのが、この石を持てば幸せになれるだの、金持ちになれるだのといった胡散臭い話という有様で、何の手掛りも見付からないままに時間だけが過ぎていった…


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