「ところで、皆さんはここにはどのくらいいらっしゃれるんですか?」

「ディサさん…慌ただしいのですが、祖父母や母の木を参ったらすぐに発とうと思っています。」

「ヴェール…そんなに急がなくても良いのではないか?」

「そうだよ、しばらくジネットとも会えなくなるんだし、もう少しゆっくりしていけば良いじゃないか。」

「いえ…いろいろとやることもありますから…」



(それに、長居をしたら却って別れが辛くなる…)




「…そうですか…残念ですが仕方ないですね…」



朝食後、皆でヴェールの祖父母、オルガの墓を訪れた。



(お祖父様…あなたが採って来て下さった護り石…確かに受けとりました。
ネリーさん、母さん、今度、ここに来る時は結婚の報告が出来るかもしれませんよ。
……どうか、今度の旅が無事に終われますように見守っていて下さい。)

愛しそうにそれぞれの木に触れながら、ヴェールはそう心の中で呟いた。








「では、森のこと、森の民のことをどうぞよろしくお願い致します。」

「こちらのことはご心配なく…皆様、どうぞご無事で…」

「ありがとうございます。では…」

「あ、ヴェール様、お忘れ物です。」

ディサがそう言うと、後ろに控えていたジネットがおずおずと前に進みでる。



「忘れ物?
なんですか、ジネットさん?」

「ヴェール様、娘のことをよろしくお願いします。」

「えっ?!
どういうことですか?」

「うちの我が儘娘が、あなたのおそばを離れるのはいやだと申すのです。
それで、話し合いの結果、あと半年間だけあなたのおそばにいることを許しました。
その間、あなたの身の回りのお世話でも…そうですわね、人間の世界でいえば花嫁修行の真似事みたいなことかしら…?
とにかく、そのように考えてこき使ってやって下さい。
お邪魔だったら送り返して下さってけっこうですよ。」

「母さん、ひどいわ!
私、ヴェールさんの邪魔なんてしません!」

「なになにっ?
花嫁修行ってことは、二人の結婚が決まったの!?」

「さぁ…それは、この二人に聞いてやって下さいな。」

「え〜〜〜っ!!
一体、いつの間に〜!?」

ヴェールとジネットは照れた顔をしながらも幸せそうに微笑んでいた。
和やかな雰囲気に包まれて、四人は西の森を後にした。


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