しばらく歩き続けているうちに、三人は木々が生い茂った森に着いた。



「ここにお墓があるのかな?」

木々の間から、沈み行くオレンジ色の太陽の光がちらちらと射し込んでいる…



「…ここはとても落ちつく場所ですね…」

「君もそう思っていたか…」

「居心地が良い場所だね。」

森の中をさらに進んでいくと、開けた場所があり、そこにはおそらくこの村に住む森の民全員が集まっていた。
中ほどには、祭壇のようなものとこじんまりしたステージのようなものがある。



「どうぞ、こちらへ」

ヨンネが、ステージ近くの場所へ三人を案内した。



「お待ちしてましたわ」

ディサが出迎え、三人の前に良い香りのする飲み物を差し出した。

まるで三人の到着を待っていてくれたかのように、それからあっという間にあたりは暗くなり、空には大きな満月が姿を現した。

森の民は満月に向かって、なにやら小声で祈りの言葉らしきものを唱え出す。
三人にはどうすれば良いのかわからなかったが、何もしないわけにもいかない。
とりあえず、各々両手を組んでネリーの冥福を祈ることにした。

小さな囁き声の集まりはさざなみのようにも聞こえる…
揺れて揺れて…その祈りは天にいるネリーの元に届くよう、小さな波を繰り返す…

幻想的な雰囲気に三人はいつの間にかすっかり飲みこまれてしまっていたが、不意につけられた明るい光によってまた現実に引き戻された。

あたりにたくさんの松明が灯されたのだ。
突然の明るさにまだ目が慣れないうちに、ステージの上には男女が現れた。
煌びやかな衣装に身を包んだ男女の男性の顔に、三人は見覚えがあった。
ユスカだ…

「ユスカは森の民一番の踊りの名手なんですよ。」

ディサの声にレヴは一瞬はっとする。



「彼女はエイラ。
彼女はとても素晴らしい歌い手です。」

しんと静まり返る空気の中に、エイラの歌が流れる…
天使の声を聞いたことはないが、おそらくはきっとこんな声なのではないか…?
エイラの澄み切った声はレヴにそんなことを感じさせた。
言葉の意味はわからなくとも、心の中に感情がストレートに流れこんで来る…



その歌声に合わせて、ユスカが舞う…
いつものユスカとはまるで別人のような…
そう、今、舞い踊っているユスカはユスカであってユスカではない…
神の化身となっているかのような神々しさだ。
いつの間にか、レヴの瞳からは熱い涙が溢れ出ていた…

この場所は、そしてこの時はとても神聖なものなのだ。
神や死者と一体になる…そのような意味合いのものなのではないかと、レヴは推測した。


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