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「まぁ〜…なんて綺麗なんだろうね。
まるでおとぎの国みたいだね!」
「あぁ、まぁな。」
レストランのテラスでパレードを見ながら、俺の母親は子供みたいにはしゃいでた。
本当はここには千絵がいるはずだった。
あいつの大好きなこの場所で、煌びやかなパレードを見ながら、美味しい食事をして、そして……
そう…俺は、この場でプロポーズするつもりだった。
無理して買ったダイヤの指輪を渡して、秋からの海外赴任に、一緒について来てくれって、そう話すつもりだった。
なのに、あいつと来たら、最近どうも機嫌が悪くて、ついにはゴールデンウィークのこの大切な約束に行かないと言い出したんだ。
あいつが来ないのに俺だけ行っても意味はないから、両親に代わりに行って貰おうと思ったら、おやじはそんな所には行きたくないって断り、仕方なく、俺はおふくろと一緒に来る羽目になってしまった。
まぁ、こんなに喜んでくれてるから、親孝行の真似事が出来て良かったとは思うけど、アラサーの俺がおふくろとこんなところでパレードを見てるなんて…
そう考えてもおかしな話だ。
(あ〜あ…俺達、もう終わりかな…)
あの日から千絵からの連絡は一切ない。
だから、俺も意地を張って、連絡してない。
このままだったら、本当に自然消滅もありそうだ。
「直君、これなんかよくない?」
「……え?」
「え?じゃなくて…
千絵ちゃんのお土産。」
「え?あ、あぁ、良いよ、別にお土産なんて…」
「何言ってんの、体調悪くて来られなかったんでしょ?
お土産くらい買って帰らなきゃ可哀想じゃない…」
「あ…う、うん。」
喧嘩したなんて言えないから、俺はおふくろと一緒に千絵へのお土産を物色した。
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