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「行かないったら行かない!」
「なんでだよ!
おまえが行きたいっていうから、俺、必死で予約取ったのに…!」
「仕方ないでしょ!
体調が悪いんだから!」
「体調って…熱もないし、病院にも行ってないじゃないか。」
「病院に行かなくても、ゆっくりしてたら治るの!」
「そのくらいなら、行けるんじゃないか!?」
俺がそう言うと、あいつは目を大きく見開いて、冷ややかな視線で俺をみつめた。
「あんた…私の体調より、遊びの方を優先させるつもりなの?
知らなかった…あんたがそんな冷たい男だったなんて!」
千絵が俺を睨み付けてそんなことを言うもんだから、俺も頭に血が上って…
「俺だって、お前がそんなに自分勝手な女だなんて知らなかったよ。
あぁ、もういいっ!
そんなに行きたくなきゃ、行かなくてけっこう!」
売り言葉に買い言葉ってやつだ。
それだけ言うと、俺はその場を立ち去った。
俺を引き止める言葉もなかった。
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