ここに戻って来たのは何年振りだろう?
おばあちゃんが亡くなってからは、ほとんど帰っていない。
何年経っても少しも変わらないこの町は、懐かしさよりもどこかいやな場所となっていた。



寒くて、不便で、何もなくて…
そんなこの町がいやで、私は十八の年にここを離れた。
憧れの都会は、そりゃあ辛いこともあったけど、新鮮で刺激的で毎日が楽しかった。
都会での日々が長くなるにつれ、田舎を思い出すことさえ少なくなった。
お正月にも実家には戻らない年が何年も続いた。



今、ここには、父親がいるだけ。
昔から口数が少なく、朴訥とした父親とは特に仲が良いというわけでもなかったから、あけましておめでとうの電話をかけるだけで子供の役目を果たしたような気になってた。
父親は、身体もけっこう丈夫だったから、特に心配なこともなく、恋しく感じることなんて全くなかった。



それなのに、気持ちが弱った時につい立ち寄ってしまったのは、ここだった。
私にはここしか頼れる場所はなかったのかと思うと、余計に気持ちが沈んだ。
ただ、ここに来ても父親に会いたいとは思わなかったのだけど…


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