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空は青く高い。
雪はまだ所々に残ってはいるけれど、芽吹き始めた木々を見ていると、そろそろ春なんだなって思わせられる。
私も人生の春を迎えるはずだった。
そうなるものと信じ切っていた。
だから、こんなに傷付いた。
結婚詐欺なんて、ニュースやワイドショーでの話だと思ってた。
だけど、気が付けば、信じ切っていた彼は姿を消し、私がコツコツ貯めて来た貯金はすっかりなくなって……
そんなことになっても、私はなかなか現実を受け入れられなかった。
ようやく、自分の状況が飲みこめたら、生きていく希望がすっかり消え失せていることに気が付いた。
私は着の身着のままで列車に飛び乗り、ずっと離れていた田舎町に降り立っていた。
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