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(……帰ろう…早く帰ってゆっくり寝て……
年が明けたら、心療内科ってとこに行ってみよう。)
私がゆっくり回れ右をすると……
『おいおい、話しかけたのはおまえの方だろ。
なんで帰るんだよ。』
「なんでって、そりゃあ…」
つい振り返ってしまったけれど、そこにいるのはやっぱりさっきのとなかいだけで……
『心配すんなって。
お前は別におかしくない。
まぁ、信じられないのも無理はないけどな。
でも、これは現実だ。
おいらは特別なとなかいなんだ。』
そんなこと言われても、はいそうですかと納得できるはずはない。
だって、となかいと人間が話せるはずなんて……
『テレパシーっていうのを聞いたことあるだろ?
動物の言葉がわかるって人間もいるよな。
お前は今、そういう力を与えられたんだって、そう考えれば不思議でも何でもないだろ?』
いや、十分不思議ですから…
『それに考えてもみろよ。
こんな貴重な体験はそうそうあることじゃないぞ。
そんな機会を不意にするなんて、もったいないと思わないか?』
そうそうあることじゃないっていうのはわかるけど、貴重かどうかはわからない。
でも……
おかしくなったならなったで良いのかもしれない。
となかいと会話できるほどおかしくなってるのなら、今更あたふたしたって仕方ないし。
そう割り切ってしまうと、怖さは消え去り、今のこの状態がとても楽しく感じられた。
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