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「……ってわけなんだ。
なぁ、おかしいだろ?」
セリナとラスターの話を黙って聞いていたダルシャは、ラスターの問いかけに苦い笑いを浮かべた。
「まぁ、そういうこともあるさ。」
「なんだって?」
ダルシャの意外な答えに、セリナとラスターは顔を見合わせる。
「ダルシャ、私達の話、ちゃんと聞いてた?」
「あぁ、聞いていた。
彼らのことなら何も心配はいらない。」
「あんた、なに言ってるんだ?
フレイザーは一人じゃ歩けない程、足に怪我をして、それをジャネットとエリオットが隠してるのに、心配にならないのか?」
「彼らのことを信じてやってくれ。
大丈夫だ。
これからもすべてうまくいく。」
ダルシャは、優しく微笑み、ラスターの肩に手を置いた。
「はぁ?そんなんで良いのかよ?
あいつらは隠し事をしてるんだぜ。
それが気にならないのか?」
苛々した様子でそう言うと、ラスターはダルシャの手を乱暴に払いのけた。
「人には隠し事のひとつやふたつはあるものさ。」
ダルシャは直接的な答えはせず、ただ思わせぶりな笑みだけを残し、そのまま二人の傍を離れて行った。
「……ダルシャは何か知ってるわね。」
去っていくダルシャの後ろ姿を見つめながら、セリナがぽつりと呟く。
「えっ?なにかって?」
「だから、エリオット達のことよ。
知ってるから、心配してないんだわ。」
「そうなのか!?なんだよ、まったく…水臭い奴ばっかりだな。」
「そうね……でも、ダルシャがああ言うんですもの。
きっと、心配はいらないことなのね。」
セリナは、そう言うと小さく息を吐き出した。
「……なんだかすっきりしないけど……
でもそういうことなんだろうな。
チェッ、心配して損したぜ。」
「じゃあ……帰りましょうか。」
「そうだな。もうじき夕食だもんな。」
少し走っておいかければすぐに追いつくダルシャとの距離を、二人はあえて埋めようとはせずに、ゆっくりと歩き始めた。
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