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「さぁ、エリオット!やってくれ!」
「だ、だめだよ!
君にだって、そんなこと……」
「エリオット……俺達、今回は何も出来ないし、せめてこのくらいのことやらせてくれよ。
もしも、その獣人がものすごく強いやつで、ダルシャやラスターが危険な目にあった時……おまえが躊躇したりしたら、大変なことになるんだ。
だから、真剣に練習しといてほしいんだ。」
静かな声で話すフレイザーを、エリオットは、困惑した顔でみつめた。
「森に行かないのは私のせいだ。
だから、私が実験台になる!」
「それはだめだ!おまえには痛い想いはさせられない!」
「やけどくらい、なんてことない。
……今までに受けた傷に比べたらそんなもん……」
「だめだ!!
そんなこと、絶対に許さない!」
フレイザーはジャネットの両肩をつかみ、厳しい口調でそう伝えた。
「……わかったよ。
それじゃあ、フレイザー……頼むよ。」
「え……そ、そうか。
それじゃあ、やってくれ!」
フレイザーは腕を組んでその場に立ち尽くし、そっと目を閉じた。
「フレイザー、それじゃあだめだ。このあたりを逃げ回るんだ。
エリオット、さぁ、フレイザーが走れないように魔法を!」
「よ、よしっ!逃げるぞ!」
駆け出したフレイザーを目で追いながら、エリオットは、魔法を発動した。
「い、いてっ!」
小さな稲妻はフレイザーの足に命中したが、その痛みはほんの一瞬のことだった。
「エリオット!もっと強くだ!
今みたいな痛みじゃ、足止めも出来ないぞ。」
「……わかったよ。」
フレイザーは、再び走り出した。
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