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「で…でも、ボク……」
「いいからやってみるんだ。
出来ないなら出来ないで良いんだから!さぁ!!」
エリオットは、渋い顔のままで小さく頷いた。
精神を集中させ、呪文を唱えて、エリオットは魔法を発動させる。
エリオットの指先からは細い電気の筋が放出された。
「おぉー……っと。
なんだ、今のは?あんなんじゃ、虫も倒せないぞ。
しかも、木の実にも当たってない。
そんなことじゃ、やっぱりダルシャの足手まといになるだけだ。やめとけ、やめとけ。」
「今のはちょっと加減をしすぎたんだ。
もう一度やらせてよ!」
「何度やっても無駄だと思うけどなぁ……」
そう言いながら、ジャネットは、小枝を動かした。
エリオットは、その動きを目で追いながら、再び稲妻を走らせる。
今度のそれは見事に木の実を捕らえ、焦げた小枝から落下した。
「……さっきよりはマシだな。
じゃ、今度は私の足を狙え。」
「えっ!?そんなのダメだよ。
君にやけどなんてさせられない。」
エリオットは、そう言いながら何度も首を振る。
「獣人が襲って来たとしても、あんたは獣人を殺したくはないんだろ?
じゃ、どのくらいの力でやれば良いか、試しとかなきゃまずいだろ。」
「馬鹿言わないでよ!
だからって、君の身体を傷つけたり出来るもんか。」
「ふん。私のこの身体はすでに汚れまくってるんだ。
今更、やけどくらいなんともあるかよ!」
「そんなこと言っちゃだめだよ!
君は汚れてなんていないんだから。そんなこと言ったら、フレイザーが悲しむよ!」
「……その通りだ。」
突然聞こえてきた声に二人が振り向くと、そこにはフレイザーが立っていた。
「フレイザー!」
「どうしたの?」
「どうって……二人がいないってセリナがいうから探しに来たんだ。」
「そうだったの……」
「エリオット……今のやりとりは聞いた。
俺をジャネットの代わりに実験台にさせてくれ。」
「ええっ!?」
フレイザーの突然の申し出にエリオットは、目を丸くして立ち尽くした。
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